wata
- 由緒と御祭神
- 戌亥の守護神について
- 御朱印のいただき方
殿様の氏神というと何やら立派な印象ですが、古い意味での氏神は私的な存在なので意外に記録に残らなかったりするんですよね〜
今回は常総市の旧水海道地区にある水海道八幡神社についてシェアします。水海道城主の氏神にして鬼門除けの神社といわれます。
非常に参拝しやすい場所にありますので、ぜひ参拝してみてくださいね!
水海道八幡宮とは
由緒
御祭神は誉田別命です。建速須佐之男命、大巳貴命、宇賀魂命を配祀しています。配祀については大正4年に合併した神社の神々ということですね。
伝わっている由緒は田村氏の氏神ということからです。すなわち具体的な創祀や創建年はわかりません。ただ、それは自然なことなのかもしれません。
現代では氏神を地域の神としていますが、本来は血脈を同じくする「ウジ」にとっての神です。それが江戸期以降に合祀や合併されることにより地域の神と変化していきました。
つまり、神社が整理・統合される過程で氏神同士が合併して地域の神社となったのですが、それを古いままの呼び方で続けているということです。呼んでいる人にとっては本来の氏神なのかもしれませんので間違いではないのですが。
少し話がそれましたが、自然発生した個人的な信仰は決まった記録を残すのが難しいものです。それでも建物の歴史くらいはと思ってしまうのが人情ですけどね。
水海道城主の田村弾正についてはほとんど分かりません。『水海道市史』によれば、三春城主の田村清包の一族とされています。「弾正」ということは、この地域で現代の警察のような治安維持をしていたということでしょうか。
「弾」の字は罪を糺すという意味があり、糾弾とか弾劾といった言葉にも使われます。江戸の穢多頭だった「弾左衛門」の名もその職掌に由来するといわれています。
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アクセス
最寄りICは常磐道の谷和原IC。下りて約10分ほどです。
電車は常総線の水海道駅を下車して10分ほど。充分徒歩で行けると思います。
駐車場は一の鳥居の先です。鳥居は354号から入れます。
名称 | 八幡神社(水海道八幡神社) |
---|---|
住所 | 茨城県常総市水海道橋本町3329 |
駐車場 | あり |
まつり | 1月1日…元旦祭 2月3日…追儺祭 4月15日…春季例大祭 6月30日…夏越大祓 旧8月15日…秋季例大祭 11月15日…七五三祭 12月31日…年越大祓 |
Webサイト | 公式サイト |
鳥居
この鳥居を見たことのある方は多いはず。鬼怒川を渡る豊水橋の前の通り沿いに位置しております。市役所も近くにありますからね。
鳥居の先に広めの駐車場がありますので、車でも安心して参拝できますよ。
駐車場の端の方に社殿の再建に向けて御用材がまとめられていました。令和9年(2027年)に幣殿増築、拝殿改修、境内地拡張などが竣工予定です。
二の鳥居は両部式。明治24年に建立もしくは修理されました。「両部」は「両部神道」のように真言宗で使われることが多い言葉。八幡社は仏教との関係が深いので明治期までは別当が置かれていたはずですが、一体どちらのお寺だったのでしょう。
社殿の裏側には大師像がいくつか。別当は真言宗だった気がしますね。廃寺となっていまはないと思いますが。。
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手水舎と御神木
一見するとふつうの手水舎。気になったのは奥にある社です。先日、水海道天満宮に参拝したときにもありました。
そのときはその天満宮固有のものかと思いましたが、近くの当社にもあるとなると気になりますね。特に祭神名もありませんし、なにか地域特有の信仰がありそうです。
少数ながら他の寺社でも見たことあるので、極端に珍しいわけではないですけどね。
社殿
水海道八幡神社の社殿は独特。拝殿は神宮のような形をしており、突き出ている部分は「軒唐破風」というそうです。
拝殿の中はいつも覗けるようになっています。子どもたちの画が並べられているようですね。近くの幼稚園のものかな?
その後ろの建物は本殿を囲う覆屋です。本殿自体はずっと小さい一軒社流造で市の文化財に指定されています。お写真は市のサイトからどうぞ。
本殿の彫刻には「天岩戸神話」も見あるのだとか。見たいよ〜!
「花散里」紋の鬼瓦
拝殿前に興味深い瓦が置かれていました。なんでも水海道地域の佐竹の血を継ぐお家のもので源氏香の記号が記されています。
佐竹氏といえば佐竹扇と呼ばれる「五本骨扇に月丸」の紋が有名ですが、「流れをくむもの」はそれを使わず佐竹氏が愛好した香を紋にしているということですね。面白い!
詳しい説明は以下をクリックいただければ、境内の説明を読めます。
また、『源氏物語』『枕草子』『栄華物語』などの絵巻物にもこれらの描写がある。室町時代になると、足利将軍義教の命により式順をふまえた、香道として成立した。江戸時代の元禄期の太平記のころには、公家、大名ばかりでなく一般庶民の間でも流行した。しかし、これらの香合わせも長続きはしなかった。それは香木が高価で入手が難しくなり、相当の金銭上の負担が必要であったためである。
源氏香が考案されたのは後水尾天皇(1596〜1680)の頃といわれる。源氏香とは、香合わせの記号で、5種の香を基本として各5包をつくり、全部で25包を混ぜ合わせ、5包を取り出して香をたき、その組み合わせをききわけて判別する。判別の結果5種ともそれぞれ別の香りと判じたときは帚木の図、全部同じ香の組み合わせであった場合は手習いの図、一、二、三が同じで四と五が同じ香の場合は賢木となる。この図形の呼び名を『源氏物語』54帖から採用したので、源氏香の名で呼ばれた。ただ組み合わせの関係で、数学的に52以上の組み合わせはできないので、54帖のうち「桐壺」と「夢浮橋」は略されている。この場合「桐壺」は「賢木」と図で表し、「夢浮橋」は「行幸」の形を模様替えして表している。52個の文様は縦、横の簡潔な直線の美しさを見せ、『源氏物語』の名を冠した優雅な衣装表現は我が国独特の素晴らしい文様といえる。このうち家紋として用いられたのは10種に満たない。
『源氏物語』54帖のうち文様として用いられたものは52個で、家紋として用いられたのは現在の調査では8個である。
足利時代に流行した源氏香は、徳川時代になると文様として多く用いられるようになった。家紋として用いられたのも、これら文様からの転化で『寛政重修諸家譜』には清和源氏義光流の佐竹氏、宇多源氏佐々木庶流の佐々氏、紀氏族の堀田氏、藤原氏支流の竹本氏がある。現在用いられている源氏香紋は「花散里」が最も多い。
011『花散里』 佐竹氏(常陸国久慈郡佐竹より起こる清和源氏義光流)
出羽国秋田藩20万5千石大名家の変え紋。この紋は城主佐竹義宣が香を愛好し、十種香の宴を度々催したほど熱狂的な結果、家紋にまでもちいたといわれる。
元富村家(常総市水海道元町)の鬼瓦は佐竹の流れを組む家系として、源氏香紋「花散里」紋としたものである。平成30年4月に母屋解体に伴い、鬼瓦3体を八幡神社宮司が譲り受け保存しているものである。
戌亥の守護神
拝殿前にこのような案内が。十二支は陰陽五行説と密接な関係があるので気になって仕方ありません!
ただ、八幡神が戌亥の守護神というのは初めて耳にしました。ぐぐってみたら大崎八幡宮や玉村八幡宮(群馬県)もそのように言われていました。
理由がぜんぜん分からなかったのでTwitterで尋ねたところ、守本尊に関係していると教えていただきました。戌亥の方角の守本尊は阿弥陀如来であり、八幡神の本地仏も阿弥陀如来であることから八幡神も戌亥の方角を守護するとされるそうです。すごい!
ところで戌亥とは西北の方角を意味します。しかし、なにゆえ西北に守護神が必要とされたのか。気になるのは当社の公式サイトにある次の文章。
八幡神はふるくから鬼門封じとしても信仰されていたため,居城の鬼門もしくは裏鬼門の方位に鎮座していたと考えられます。
創祀期-安寧の神様・武運の神様として
鬼門は丑寅の方角、つまり北東。裏鬼門とはその反対に位置する未申(南西)のことです。しかし、北東や南西に西北の守護神を祀るのはおかしい。そこで考えられるの鬼門=北東ではない可能性。易(先天易)の八卦を用います。
図では艮(五行説の丑寅であり鬼門)が西北に充てられています。これなら鬼門除けと西北の条件の両方を満たしますが、先天易では乾(戌亥)が南にあるのが気になります。境内の案内は戌亥なので易とは違うと考えることもできますけどね。
ただ、易といえば一般的に後天易のことですから先天易で説明するのはかなり無理がある気がします。これはもう神社で聞くしかないですかね。。
神輿殿
大正期に合併した八坂神社。八坂神社といえばお神輿を担ぐ祇園祭ですよね。
祇園祭はすぐ近くの水海道天満宮と交替で実施しています。駅前を中心に非常に賑やかなのでぜひお立ち寄りください♪
境内のこの建物は神輿殿です。覗き込むと黄金色のお神輿が見えますよ!
御朱印
水海道八幡宮の御朱印です。社殿に向かって左の授与所でいただけます。ただ、基本的には不在なので隣の宮司宅になるかと思います。
2022年現在、書き置きの御朱印が置いてありました。賽銭箱に初穂料を納めていただけます。
まとめ
この記事のまとめ
- 水海道城主・田村弾正の氏神としてはじまったとされる
- 戌亥は先天易の丑寅の方角を意味するのかもしれない
- 御朱印は拝殿向かって左の授与所でいただける
参考文献
茨城県神社誌/茨城県神社庁
茨城の地名/編:平凡社
wataがいま読んでいる本
マンガで『古事記』を学びたい方向け
神社巡りの初心者におすすめ
記事は筆者の主観が多分に含まれております。
誤解や情報が古くなっている場合があることをご了承ください。