【著:檻之汰鷲】『漂流夫婦、空き家暮らしで野生に帰る。』を読む|北茨城市

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wata

ども!いばらき観光マイスターのwata(@wata_ibamemo)です!

北茨城市の地域おこし協力隊・檻之汰鷲おりのたわしさんの著書の第2弾が発売されました!

前回は芸術家としてのスタートから海外での活動が中心。今回は帰国してから北茨城市にやってくるまでのお話です。

内容を一言で説明しましょう。家賃を0円にするために頑張りました!

。。大きな出費である家賃を節約するため、空き家を住める環境に改修するということです。改修といっても専門家ではありませんので技術の習得からはじまりました。

芸術と関係あるの?と疑問を持つことでしょう。芸術と技術はもともと同じ意味。芸術は積極的にアピールすることで区別されてきました。もとが同じですから、技術を身につけると芸術にも役立つんです!

本書はエッセイや自己啓発にジャンル分けされるかもしれませんが、節約のためにはじまったことなので『経済』の視点で気付いたことをご紹介します♫

MEMO

檻之汰鷲さんは石渡のりおさん・ちふみさん夫婦のアートユニット。茨城県の北茨城市で地域おこし協力隊として活動中

本の概要

はじめに、著者の理想とする生活を確認しましょう。

【理想】

海のそばに空き家を見つけ
ボートを手作りして
海と遊びながら
作品をつくり暮らすこと。
P10/漂流夫婦、空き家暮らしで野生に帰る。

人付き合いや時間に追われる煩わしさが一切なく、自然と戯れながら作品をつくる。。このような生活ができたらどんなに幸せでしょうか。

本書は理想の生活をするため、夫婦がさまざまな冒険をした記録が書かれています。数々の課題にぶつかりながらも解決の糸口を見つけ出し、努力と助け合いで乗り切る。

まったく同じ問題を抱える読者は少ないと思いますが、お金がない、技術がない、気持ちが伝わらずに凹む、はだれにでもあること。単なる成功体験ではなく、現実の厳しさを素直に認めながら前進する姿は心打つものがあります。

タイトルに『野生に帰る。』とありますが「動物のような生活をする」とは違います。極めて理性的です。「本能が望む生き方をする」という意味だと思います。

よく見られたいとか、高い評価を得たいとか、お金持ちになりたいとか、理想にないことは本文にありません。いま北茨城市で理想的な生活をされているのはこの経験があってこそなのでしょう。

全体的には空き家探しと改修作業および技術の取得について書かれています。空き家探しのスタートには経済的な理由がありますので、著者と同じように「どうやったら節約できるか」「よい場所に住めるか」「作品を手にとってもらえるか」を考えながら読むと楽しめると思います。


参考
時間も思考も超えて没頭する日々。生きるための芸術の記録

空き家の活用

家賃。。毎月大変ですよね。可能な限り0円に近づけたい気持ちはよくわかります。収入が安定しないうちは尚の事。著者はかつてアフリカで家を建てた経験があるので、日本の空き家を自分で改修して住もうと考えました。

家賃を節約し、改修技術を身につけて生きる技術(芸術)を磨く。空き家は全国で800万戸以上あるので、それを改修できるなら自分の好きな場所で生活できそうです。

ただ。。実際に住める空き家はごく僅か。改修も技術的な課題が多く簡単ではありません。著者は驚くほど高いハードルを目の当たりにしました。その奮闘は実際の本にて。。

需要と供給

空き家探しは家賃を節約するためです。都市から離れていて仕事が少ない場所は住みにくい。だから家賃を安くしないと住んでもらえない。そこを狙いました。

需要と供給を理解されてのことでしょう。需要(住みたい人)に対して供給(家)が余っている。だから、供給側は家賃を下げることでマッチングしようとする。それにみんなが続くから全体も安くなる。

需要と供給のバランスによって価格が決まるメカニズムはとても大事です。なにかを安く手に入れたいときに役立ちますが、高く売りたいときにも役立ちますよね。

本書の冒頭でザンビアではアートが通用しなかったとありました。アートより食べ物の方が貴重だったからです。需要がない場所では厳しい結果が出るということでしょう。

なにかつくろうと考えたとき「なにをつくるか」に気を取られますが、「だれに対して」はさらに重要かと思います。受給のバランスはつねに頭におきたいですね。

夫婦で活動

著者の檻之汰鷲さんは夫婦のアートユニット。本書のほとんどは石渡のりお(夫)さんが書いていらっしゃいますが、コラムはちふみ(妻)さんが担当。生活感溢れる軽快な文章が素敵です。

ご夫婦でアートは珍しくないかもしれませんが、海外での活動や漂流生活となるとどうでしょう。作品にどのような影響があるのでしょうか。

夫婦ではありませんが、2人体制で思い出すのは板谷 波山いたや はざん。下館(現:筑西市)出身・文化勲章を受賞した陶芸の達人です。以前、筑西の記念館を訪れたとき、相棒のろくろ師現田市松げんた いちまつを知りました。波山と一緒に50年も活動した方です!

波山は陶芸家としては遅咲き。デビューは31歳でした。学校で陶芸を習えず師匠もいなかったので険しい道でしたが、それを助けたのが腕のいいろくろ師。

波山にろくろの技術はあったかもしれませんが、そこに注力しなかったおかげで別の技術を伸ばせました。分業できたので強みを伸ばせたんです。夫婦で同じことができないでしょうか。

MEMO

板谷波山は北茨城市で晩年を過ごした岡倉天心の教え子です

分業

イギリスの経済学者アダム・スミスの『国富論』を読んだとき、はじめの方に「分業って大事!」とありました。

例えば小さな針を作るとき。すべての工程を一人でやると技術の習得に時間がかかり、販売までに生活が困窮します。

しかし、分業すればそれぞれの工程の担当者はより早く技術を向上できます。新技術を覚えたり、機械化に対応しやすいこともメリット。分業は生産性を上げるんです

芸術は分業しにくそうですが、本当にそうでしょうか。板谷波山はできていたと思います。分業による作品づくりは生産性を上げ、よい作品をたくさんつくれないでしょうか。

波山のように出遅れてしまった人こそ検討する価値があると思います。『作品づくり』そのものに価値を見出すならともかく、品質や収益の向上には役立つはずです。

wata

このブログも意識的に分業して個性を出しています。伝わっていると嬉しいのですが。。

お金からの解放

本書で深く考えさせられたのは「お金からの解放」について。出版社のシリーズにもなっています。巻末の説明から一部抜粋します。

「お金からの解放」シリーズについて

本シリーズが生まれたきっかけは、生きていく上で、自分の中でのお金に対する価値の比重を上げていくことが、はたして「心の豊かさ」や「内面の成長」につながっていくのだろうか、という疑問からでした。
逆に、お金に対する価値の比重を下げた場合、どのような生き方を構築できるのでしょうか。

シリーズに檻之汰鷲さんがいるのは『お金に対する価値の比重』が特別で、読者の新しい価値のヒントになるからだと思います。

ですが、お金から解放されているのでしょうか。空き家探しや改修、地域おこし協力隊への赴任など、お金と無縁のことはありませんでした。解放とはなんでしょうか。

ここで解放を定義したり解放される方法を述べたりはしません。どれだけ理論的であっても『不安』は解消できないでしょう。不安は心の奥底にあって自覚できないものだと思います。

ただ、不安の大きさは変わらなくても比重は変えられます。例えば、夢中になるものがあれば、その比重が大きくなることで不安は小さくなります。

お金からの解放とは、自分の望んだ道に進みながらしっかり稼ぐこと。希望を持ちながら毎日を積み上げていくことではないでしょうか。

資産と負債

世界で3000万部を突破した『金持ち父さん』シリーズ。執筆したロバート・キヨサキは資産と負債を次のように定義しています。

「資産」は私のポケットにお金を入れてくれる
「負債」は私のポケットからお金をとっていく
金持ち父さんロバートが語る「本当の資産」とは何か/AllAbout

新たなお金を生むものは資産。支払いが発生すると負債です。乗らない車とか着ない服とかは負債。一方、資産には現金や不動産以外に知識や経験、友人関係も含まれそうですね。

「無駄遣いはしない」「貯金をしておく」などはお金に対する知識というより道徳。現代の資産は形を変えたり種類が増えて複雑ですから、資産形成の教育の必要性を感じます。

まとめ

檻之汰鷲さんの著書の第2弾が発売。内容は北茨城市にやってくる前に行った空き家探しと改修について。

理想の生き方を求めながら芸術を磨いた過程があります。お金や経済について考えながら読んでいただくと楽しめます。


参考
『漂流夫婦、空き家暮らしで野生に帰る。−生きるための芸術2−』著・檻之汰鷲(おりのたわし)の二人、石渡ノリオ・チフミにインタビュー!!http://asobisoft.com