水戸黄門ゆかりの六地蔵寺〜桜と七地蔵の伝説|水戸市

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wata

ども!いばらき観光マイスターのwata(@wata_ibamemo)です!

常陸国の大掾だいじょう氏、佐竹氏、水戸徳川家に崇敬されたお寺。水戸の六地蔵寺ろくじぞうじをご存知でしょうか?

名前の通り六体の地蔵がご本尊です。深い歴史と黄門様の逸話があることで知られていますが、大変美しい一本桜があることでも有名。若い方もきっと気に入ると思います。

2018年の春に桜の撮影をしました。境内の桜は約50本。3月下旬から4月上旬に見頃を迎えますので、ぜひこの機会に知って春をお楽しみください!

この記事でわかること

  • 御本尊と歴史
  • 「七地蔵」の伝説
  • 御朱印のいただき方
六地蔵寺
六地蔵寺

由緒

大同2年/807年
創建

六反田古墳群の中心にあたる霊場に開山。

永享元年/1429年
中興

宥覚上人によって中興される。

江戸時代
朱印地を賜る

幕府より朱印地を賜り、末寺二十五ヶ寺を有する本山となる。
*『茨城県の地名』によると開基帳(1663年)に朱印地30石、末寺17ヶ寺、門徒300人、百姓旦那190人で脇坊として福寿院があった。

明治42年/1909年
小判発見

旧法寶蔵から慶長小判30枚が見つかる。光圀公が将来の修繕費として保存されたものだった。
*境内立て札による

昭和25年/1950年
茨城百景に選定

正和6年/1317年
地蔵堂建立

六地蔵寺の前身である地蔵堂が建立される。

元禄13年/1700年
地蔵堂再建

徳川光圀公により建立。
*境内石碑による

平成4年/1992年
地蔵堂大改修

平成3年から4年かけて、地蔵堂、観音堂、尊像、宮殿を修復。
*境内石碑による

昭和56年/1981年
新法寶蔵建立

ご本尊は地蔵菩薩です。像は行基作と伝えられ、古来から安産子育、心願成就に霊験あらたかとされています。真言宗寺院ですから、大日如来以外を本尊とするからにはよほど縁が深いのでしょう。

創建については不詳ですが、地蔵信仰はかなり古くからあったらしく、かつての地蔵堂は14世紀まで遡るといわれています。ちなみに寺号の「六地蔵寺」の呼称は当寺が唯一なのだとか。

常陸国を治めていた大掾氏、佐竹氏、水戸徳川家からも崇敬されました。旧法寶蔵から水戸黄門(光圀)が将来の修繕のためにと残した小判が見つかったことは裏付けとなるでしょう。

歴代のご住職の中で特に有名なのは三世の恵範上人です。西国に遊学し、多くの経典を集めて書写したことにより、当寺が檀林(学問所)となる礎を築きました。

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文化財の数は金沢文庫、足利学校に次ぎ関東で3番目。平安時代から室町時代にかけて3,000点以上です。真言宗にとって重要な法要『伝法灌頂』を古来の法具で行える特別なお寺です!
文化財一覧

昭和46年(1971年) 四脚門(県指定)、六地蔵寺所蔵典籍・文書(県指定)
昭和50年(1975年) 絹本着色両界曼荼羅、絹本着色釈迦十六善神頭、絹本着色真言八祖像、絹本着色弘法大師像、絹本着色十二天立像、絹本着色六字経曼荼羅、絹本着色十三仏図、絹本着色制多迦童子立像、漆塗経櫃、銅装龍輪宝羯磨文戒体箱、銅装龍輪宝羯磨文説相箱、銅板貼山伏笈、密教法具、灌頂用具(すべて県指定)
昭和58年(1983年) イチョウ、スギ(いずれも市指定)
昭和60年(1985年) 板碑(市指定)、シダレザクラ(市指定)
平成2年(1990年) 法寶蔵(市指定)
平成3年(1991年) 朱漆足付盥(国指定)
平成16年(2004年) 紙本墨書 神皇正統記 六地蔵寺本(県指定)

六地蔵寺は中世まで六蔵寺とも称しました。

アクセス

名称倶胝密山ぐていみつざん 聖宝院しょうほういん 六地蔵寺(水戸大師)
住所茨城県水戸市六反田767
駐車場無料140台あり
Webサイト六地蔵寺公式

四脚門

六地蔵寺の入口は主に二箇所あるのですが、おすすめはなんといっても正門の四脚門から。県の文化財に指定されているため実際に通ることは叶わないものの雰囲気はたっぷりです!

簡素な造りで規模も大きくはありません。しかし細部の造りは室町時代末期の特徴を残しているのだとか。少なく見積もって500年ほど前に建てられたということでしょうか。

面白いことに頭貫の木鼻や肘木の絵・繰り形は水戸市元吉田の大寺院・薬王院本堂に類似しているそう。同じ職人さんが関わったのかもしれませんね。

ちなみに四脚門の足は六本です。数が合わないと思うことなかれ。元来、門の足は二本。当然のことなのでこれはカウントせず、補強のために加えられた足だけを数えるのです。

地蔵堂

地蔵堂
地蔵堂

六地蔵が安置されている地蔵堂です。元禄13年(1700年)に徳川光圀が寄進しました。改修を重ねているので外観は美しさが維持されています。中を見るとまた雰囲気が違いますよ。

御本尊の六地蔵が安置されているわけですが、よく見るとお地蔵さまは七体あります。数が合わない理由は後ほどご紹介する民話が関係しているかもしれません。

こちらでは密教(真言宗)寺院らしく大護摩修行が行われます。狭い?と思いましたが、2階建てに見えてじつは1階建て。意外と広く感じます。

訪れた日はちょうど戌の日。安産祈願のため多くの若い夫婦がいらっしゃいました。六地蔵寺は古くから安産・子宝や子育て祈願のご利益があると知られているのです。

茨城の安産祈願といえば板橋不動尊(つくばみらい市)や雨引観音(桜川市)、虚空蔵堂(東海村)ですが、六地蔵寺と同じ真言宗です。茨城の伝統なのでしょうか。興味深いことです。

本堂

本堂には堂々と三つ葉葵の紋。徳川家の証であり、水戸徳川家との深い関係を示しています。いつも五色幕があって明るい雰囲気。建物は新しく地蔵堂とは対照的ですね!

立て札の案内によれば本尊の地蔵菩薩が安置されているとのこと。こちらが行基作と伝えられるものでしょうか。六地蔵とは別に本堂にあるのですね。

また、他に十二支各守本尊と徳川家累代のご位牌も祀られています。守本尊は室町時代の頃に発祥といわれる思想で、東西南北の四方に東北・東南・西南・西北の四隅を加えた八方を守護する仏尊があります。

扁額にあるのは「水戸大師」。一般的に大師といえば弘法大師のことで、真言宗のお寺では「大師」を愛称として用いることがよくあります。ただし、やや格上でなければ恐れ多くて名乗りにくいかもしれませんね。

境内の桜

春祭りの境内
春祭りの境内

4月8日は花祭り。お釈迦様の誕生日です。その名の通り桜を楽しめると思いきや…見頃としてはちょっと遅いのです。桜が目当てなら3月下旬がおすすめ。開花状況は公式サイトでもアナウンスされます。

境内中央にあるシダレザクラはエドヒガン。ソメイヨシノより1週間ほど早く開花します。見頃を迎えると参拝可能な時間が設けられますので、参拝前に公式サイトで確認しておきましょう。

ちなみに令和6年は朝6時から夕方6時まで境内に入ることができました。

六地蔵堂の桜
六地蔵堂の桜

地蔵堂前の桜は見事な花付き。ピンク色の屋根をくぐってからお参りします♫

光圀ゆかりのシダレザクラ
光圀ゆかりのシダレザクラ

六地蔵といえば、なんといっても光圀ゆかりの一本桜!市指定の文化財です。樹齢は約200年。光圀が実際に見た桜のひこばえ(子孫)です。

高さ約10m、幹の太さは約2.5m。大きすぎるので支えがありますが、花付きから活力を感じます。すでにこの樹の子孫が30本ほど花を咲かせているのだとか。

常磐百景(@joban_100)さんの茨城一本桜番付(2018年)では小結に選ばれています!

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写真は3月31日に撮影しました。満開ですね!

御朱印

六地蔵寺の御朱印
六地蔵寺の御朱印

六地蔵寺の御朱印です。本堂左手の授与所でいただけます。さらさらと左右に流れるような「南無六地蔵尊」がユニークです!

令和6年には茨城新聞が御朱印を記事にしました。YouTubeで境内の様子なども紹介しております。

書き手が何人かいらっしゃるため書体には違いが生じます。

民話『六地蔵寺の七地蔵』

六地蔵寺にはなんとも不思議な伝説があります。茨城民俗学会が編纂した『茨城の伝説』から要約してご紹介します。

むかしむかし。ある日の夕方、六地蔵寺の和尚さんが水まきをしていました。ところが、その水まきは止まることなく繰り返され、ついには境内が水浸しになりました。

お参りの村人はその様子に驚き「和尚さん、こんなに水をまいてどうするんですか?」「唐の金山寺で起きた火事を消しているんだ」

村人はさっぱり意味がわかりませんでした。ひとまずお参りをしようと本堂に行くと本尊の六地蔵が五体しかありません。村人は「和尚さん、お地蔵様が足りませんよ!」すると和尚は「火事を消すために唐に渡ったんだよ」

やはり意味がわかりませんでした。でも、このままではいけないと村人は仲間と相談して新たなお地蔵様を作り、お寺に奉納しました。それからのある日…

本堂の六地蔵は七地蔵になっていました。和尚の話では、唐の火消しが済んで戻ってきたのだとか。以来、六地蔵寺の七地蔵としてより多くの信仰を集めるようになりました。

六地蔵が七地蔵になってしまったというお話です。金山寺は実在しますが、六地蔵寺とどんな関係があるのでしょうか。

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最後に1体増えてしまう理由もミステリー。このお話は六地蔵の公式サイトでは紹介されておらず、本尊はもちろん六体です。

フォトギャラリー

まとめ

・六地蔵寺は水戸黄門ゆかりのお寺。安産や子育て祈願が盛んで僧侶の学問所でもあった。

・花の寺としても有名。3月下旬から上旬にかけてシダレザクラとソメイヨシノが見頃を迎える

・御朱印は本堂左手の授与所でいただける

参考文献

いばらきのむかし話|編:藤田稔
茨城の伝説|編:茨城民俗学会
茨城の古社寺遍路(上)|一色史彦
茨城の寺を訪ねて|茨城放送
水戸の文化財|水戸市教育委員会