wata
- 由緒と御祭神
- 当社と「鳥」の関係
- 御朱印のいただき方
八幡社といえば、稲荷神社に並ぶほどポピュラーな神社。しかしながら、茨城の県央から県北にかけては大きな八幡社が見られません。
水戸藩の寺社改革の結果でもあるのですが、それでは残った八幡社はどんな神社なのでしょう。
今回はそのひとつである若宮八幡宮についてシェアします。非常に個性的なので、ぜひ覚えていただき参拝にお役立てください!
若宮八幡宮とは
由緒
鎌倉から巫女鶴子が来往して数代に渡って奉仕
御祭神は大鷦鷯尊(仁徳天皇)と倉稲魂命です。若宮八幡宮とは、八幡神(誉田別命=応神天皇)の若君(子息)の宮という意味なんですね。じつは今回初めて知りました。
仁徳天皇といえば「聖帝」と呼ばれ「民のかまど」の逸話が有名ですね。民のかまどに煙が立っていないことから困窮を察して税を許したといわれています。
『日本書紀』ではその際に次のように述べたとあります。
「天が君を立てるのは、百姓のためである。だから、君は百姓をもって本とする。かつての聖王は、一人でも飢えたなら、自らを顧みて責めたという。いま百姓が貧しければ、朕も貧しい。百姓が富めば、朕も富む。百姓が富み君が貧しいということは、未だない」(現代語訳)
現代語 古事記/竹田恒泰
あまりに理想的なので、これが事実か定かでありません。しかし、重要なのはこれが理想の君主像として正史に書かれていることでしょう。書いたからには矛盾はできません。
一方、仁徳天皇は恋多き男性で皇后の嫉妬に頭を悩ませたとも。最終的には説得して和解しますが、そちらの方が貧しい生活よりも大変だった様子。なんでそんなこと歴史書に残した。。
当社は応永元年(あるいは応永年間)に佐竹義仁(義人とも)によって創建されました。ただ、同者は応永初期の生誕なのでちょっとだけ時代が合わないような気がします。
創建に関連して興味深いのは常に稲荷神社と一体であることですね。社号には八幡宮としかありませんが、現在も本殿は2つ並んでいて強い稲荷信仰が見受けられます。
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仁徳天皇についてはこちら
アクセス
最寄りICは常磐道の常陸南太田です。下りて約11分(7km)です。鳥居の前に3台ほど駐車できますが、不安であれば境内東側に大きな駐車場があります。
電車の場合は水郡線の常陸太田駅ですね。約1.6kmほどなので徒歩だと20分ほどかかります。
神社は鯨ヶ丘と呼ばれる高台に鎮座しており、境内からこのような市内の風景を見ることができます。
名称 | 若宮八幡宮 |
---|---|
住所 | 茨城県常陸太田市宮本町2344 |
駐車場 | あり |
Webサイト | 公式サイト |
SNS |
鳥居
一の鳥居がこちら。白く輝く鳥居は震災の翌年に再建されたもの。県北に位置する常陸太田は震度6程度の揺れがあったので、被災した寺社は少なからずありました。
鳥居の下辺りの玉垣にはこのような彫刻が。「東京大伝馬町」。。当地ご出身の方かもしれませんが、『茨城県神社誌』には氏子のほかに崇敬者1000人とあるのでそちら可能性もあります。
一見して決して大きくない当社になぜそんなに崇敬者がいるのか。単に由緒あるだけでなく、後述するような個性があるためではないかと思います。
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写真右下の砂利の辺りが駐車スペースです。
天然記念物の「ケヤキ」
鳥居の先には巨大なケヤキが待っていました。平成20年の計測では次のようになっています。
根本 :25m
樹高 :約30m
最大枝張り :約20m
樹齢 :640年
樹齢640年ということは当社の創建よりも古く、遷座の時点で樹齢300年以上。もしかしたら造営のきっかけになったかもしれませんね。
見た感じではさほど傷んでいませんので、まだまだその生命を繋げていけそうです。
神門
参拝前に手水舎でお清め。かなり立派な建物です。石造の鉢は天保15年に寄進されたもの。古い!
飾られていたのは千両かな?南天や万両と似ていますけど、実が葉の上に付くのが特徴です。この日はまだ1月だったので正月飾りの残り、あるいは旧暦の春を迎えるためにあったのでしょう。
境内を見事に仕切る神門。神域として風格が増す立派な造りですね。
拝殿
入母屋造、銅板葺きの拝殿です。錆によって屋根がいい色合いになっていますね。鮮やかな扁額なので遠くからでも視認できます。
扁額は2つありまして、奥まったところの扁額には稲荷神社の社号もありますよ。
扁額の手前には鳳凰と思われる彫刻がありました。当社は太田城(太田御殿)から南に遷座されましたので、四神獣のうち南を守護する鳳凰が選ばれたのでしょう。
もしくは神武天皇の東征を助けた金鵄かもしれません。とにかく「鳥」ということですね。じつはこれには重要な意味があるのではと思います。
当社の祭神の大鷦鷯尊の「鷦鷯」は鳥の名前です。『日本書紀』によれば、本当は尊と同日に生まれた武内宿禰命の子の名前でしたが、なぜか子どもの名前を交換して名付けられました。
また、当社の例祭の日取りは旧暦8月15日です。8月は酉(鳥)月であり15日はそのど真ん中ということになります。
若宮八幡宮といっても大鷦鷯尊を祭神としない場合は多いですし、例祭が8月とは限りません。つまり、これらは当社が「選んだ」結果であり、鳥にちなむ独特の信仰があると思われるのです。
本殿
若宮八幡宮には稲荷神社と八幡宮にそれぞれ本殿があります。遷座したにもかかわらず、二社が区別されているのは興味深いことです。関係が深いなら相殿としてもおかしくありません。
では、この二社にはどのような関係があるのか。せっかくなので明治以前に浸透していた陰陽五行説で考えてみましょう。
まず、当社は祭神および例祭から鳥に対するこだわりを強く持っています。鳥は五行説において金気の中央に位置し五気の中でもっとも強力な気です。
金気と稲荷神社の関係は明白です。稲荷さまことキツネは体が黄色いことから土気の象徴とされてきました。土気は金気を生む土生金という法則を持っています。
法則によって生まれた場合は、通常の気よりも強力とされます、ですから、当社が太田城内に創建された際、もしくは同時期に稲荷神社はすでにあったのでしょう。
では、どうして金気にこだわるのか。それは創建時に起きていた佐竹氏の内紛に関係すると思います。
『茨城県神社誌』の当社の社伝によると、創建は居城の「青龍城中」だったとあります。
「青龍城」は太田城の別名です。そして青龍とは四神獣として東を守護する存在です。この東が朝廷なのか鎌倉府を意味するのか不明ですが、「東の城」として間違いないでしょう。
創建当初は佐竹氏が後継問題で揉めており、佐竹義仁はその収束のために関東管領の上杉家から送り込まれました。つまり、義仁はなんとかして「東」をまとめる役目だったのです。
そこで陰陽五行説を用いたと考えられるのです。東は木気に属しますので金剋木の法則を利用して落ち着かない木気を抑えつけようとしたわけです。
当社社宝の僧形八幡画像は錫杖を持ち、斜め向きに座す姿で、袈裟には金泥で文様が施されているそうです。同画は創建時に義仁が描写したといわれており、金泥は金気を意味するのでしょう。
要するに東の統治に必死だった佐竹氏は陰陽五行説による呪術にも頼ったのだと思います。一般的な八幡宮と異なる点が多いのはそのせいでしょう。
本日は責任役員と氏子総代の参列のもと、紀元祭、祈念祭、初午祭、天満宮の梅花祭をあわせて執り行いました。
雪はうっすら白くなるくらいで、あっというまにとけて消えました。
おみやげは鍋屋さんの紅白饅頭でした。 pic.twitter.com/iM4JNpdMuO
— 若宮八幡宮 (@wakamiya_h) February 11, 2022
本日、例祭及び奉賛会奉告祭、新型コロナウイルス終息祈願祭を行いました。来年とは異なり、神事と鶴子舞奉納のみとなりました。 pic.twitter.com/4O7fdZ9ZbP
— 若宮八幡宮 (@wakamiya_h) May 15, 2021
五行説では特定の気が極端に大きくなるのを危険視します。そのためか当社では金気を抑える火気の祭り(初午祭や5月例祭)がしっかり行われていますよ♪
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大金灯籠
参道の左手に見えるこちらの大きな灯籠が大金灯籠です。高さ約1.7m、台座を含めるとだいぶ高くて立派ですね!
こちらは太田が鋳物の町だった明治21年(1888年)に建立されたのですが、平成23年(2011年)の東日本大震災により倒壊。それが令和2年(2020年)になって再建されました。
灯籠は桜川市の業者によって原型を維持しつつ修復され、補強が加えられました。新たな土台部には再建に尽力した方々の名前が並べられているのですね。
それにしてもかつて太田が鋳物の町だったとは知りませんでした。読売新聞の記事によれば、江戸時代に烈公の命で大砲の製造を請け負ったことがあるそう。また、昭和の東京オリンピック(1964年)の聖火台を製造した鋳物師も太田で修行していたのだとか。知られざる歴史ですねぇ!
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御朱印
若宮八幡宮の御朱印です。現在は書き置きになるかと思います。
参道右手の参集殿からどうぞ。兼務社の長幡部神社の御朱印もいただけます。
まとめ
この記事のまとめ
- 御祭神は大鷦鷯尊(仁徳天皇)、佐竹氏が太田城内に創建
- 鳥と関係が深く、佐竹氏の東国統治の狙いがあったと思われる
- 御朱印は参集殿でいただける。兼務社の長幡部神社の分も可
参考文献
茨城県神社誌/茨城県神社庁
茨城の地名/編:平凡社
この記事で紹介した本はこちら
wataがいま読んでいる本
マンガで『古事記』を学びたい方向け
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記事は筆者の主観が多分に含まれております。
誤解や情報が古くなっている場合があることをご了承ください。