wata
この記事では竹内睦泰さんの著書『古事記の宇宙』をご紹介します。
目次
概要
『古事記の宇宙 ー古神道的考察ー』は2017年に発行された竹内睦泰さんの著書です。
竹内さんは元大手予備校の講師で第73世武内宿禰として様々な活動をされてましたが、今年(2020年)1月に逝去。わたしは竹内さんの著作やYoutube動画などを拝見しておりまして、本書は発売直後に購入しました。
ですが。。購入当初は古事記の理解が浅く、本書の難解さについていけず読むのを止めてしまったんです。そのあとどうしても気になったので勉強しながら読み直し、3回目の挑戦でやっと全容を掴むことができました。
そんなわけなので古事記を読んだことがない方にはオススメしません。少なくとも本書で触れられる古事記の上巻(神話)の内容は理解しておく必要があるでしょう。その代わり読んだことある方にとってはたまらない内容となっています。
本書は古事記に秘められた暗号を解くという内容です。
怪しい印象を持つかもしれませんが、そもそも古事記にはたくさんの謎があります。古事記は現代のように事実を伝える歴史書ではありません。かといって天皇や為政者のためのファンタジーでもなく、道徳や信仰を語っているわけでもありません。
著者も古事記に書かれたことは事実ではないという立場ですが、暗号を解読することで真実の一端が見えるとしています。
本書は極めてミステリアスです。竹内さんだからこそ出版できた貴重な一冊といえるでしょう。
竹内文書
本書を書かれた理由はいくつかあるのですが、そのひとつが茨城の「竹内文書」の存在です。竹内文書はWikipediaだと「偽書」と断言されていますが、わたし自身は実物を読んだことがないので判断できません。
著者は自身の竹内家に代々伝わる竹内文書の存在を認めつつ、それと異なる内容が広まっていることに憤りを感じていました。そこで本来は門外不出の『正統竹内文書』をある程度語っておくべきだと考えたそうです。
茨城の竹内文書については以下のように書かれています。
茨城竹内文書の元になる話を伝えた、茨城の竹内家というのは、実際には竹内家との血縁はなく、竹内家の直会(宴会)には参加できない人でした。ただ、代々竹内家の墓守をしていた地下人だったので、直会の席で語られる話を断片的に漏れ聞いていたわけです。
古事記の宇宙
茨城の竹内文書は県北の某神社に伝わっているようですが、著者はそこまで言及していませんのでここでも具体的な名称は臥せておきます。本書の内容と神社のWebサイトの内容は似ている部分が多々あってなかなか興味深いです。気になる方は検索してみてください。
それでは正統竹内文書とはなんなのでしょう。
ズバリ古事記が編纂された時代からある口伝です。古事記は日本各地の伝承を集めたものですから、竹内文書もその一部だったということです。「口伝が文書?」という疑問はとりあえず無視してください。読めば理解できると思います。
古事記は天皇の正統性を伝える意図があるといわれています。そのため意図と異なる伝承は省略されたり正史・日本書紀に書かれていたりします。正統竹内文書は省略された部分にあたり、古事記と合わせることで編纂前を推察できるというわけです。
じつは竹内文書の正体も語られているのですが。。すご〜く面白い部分なので実際に読んでみてください!
wata
わたしが読書を挫折したワケ
わたしが本書をはじめて読んだ時、正直言ってかなり怪しく感じました。古代の伝承なのに「ひも理論」や「ビッグバン」、「恐竜」といった単語が出てくるからです。明らかに後世に付け加えられたもので信憑性が著しく低いと思いました。
著者の竹内さんの人柄は好きですし、類まれなる記憶力を持ち古神道の神職もされていることから信用していました。だからこそ混乱してしまったんです。
ただ、それはわたしが口伝に対して浅い理解だったせいです。
「公にしたくないから文書にせずに口伝」とばかり考えていたのがよくないです。たしかに一理あるのですが、一方で「文書なら正確に後世に伝わるか」といえばそれも疑問です。
文字の形や意味は時代によって変化してきました。文字をつなげて文章にすると表現の幅が広がりさらに多くの受け取り方ができます。いま江戸時代の文章を読める人はわずかではないでしょうか。意味を正確に理解できる人はさらに少数かと思います。
古代となればさらに難易度が上がることでしょう。だとすれば、要点を変えず時代に合わせた言葉で伝えるのもひとつの方法ではないでしょうか。
仏教に経典などで教えのすべてを明らかにした顕教とそうでない密教があるように、世の中には書かれていなくても大切なことはたくさんあるということですね。
竹内文書といわれる口伝は時代にあわせてバージョンアップされてきました。そうすることで1000年以上前にあった伝承の真理に近づこうとしているのではと思います。
wata
感想
「口伝ではこう」と言われるとまったく検証できないのでモヤモヤした気持ちになります。でも、話としては非常に面白いので読み進めてしまう。。
特に月夜見命がすごく気になりましたね。古事記にほとんど記述されていませんが、じつは重要な神ではないかと思いました。
例えば、古事記で有名な天の岩戸のシーン。高天原で暴れた須佐之男命に憤慨した天照大御神が心を閉ざして岩戸に隠れるというお話ですが。。
太陽神が姿を見せないことで世界はまっくらです。でも、そうだとしたら岩戸の前で踊った天鈿女命の姿は見えたのでしょうか。なにか灯りがあったなら記載されていそうなものです。
太陽が見えなくなったら。。ふつうに考えると夜です。明るいのは月があったからでしょう。つまり天の岩戸の場面は夜の世界を知らす月夜見命がいたことを暗示しているのです。
これを指摘した本は読んだことがありません。口伝にはもっと詳しくあるようなので大変気になっています。
ちなみに以上の内容はソフトな方で、「天御中主神より前の神」や「内八洲外八洲観」、「十六弁菊花紋の由来」などハードな内容も盛り沢山です。古事記を一通り学んだ方はぜひ本書に挑戦してもらいたいですね!
まとめ
この記事のまとめ
- 古事記の暗号となっており読み解くことができる
- 読み解く鍵は門外不出の竹内文書
- 茨城の竹内文書とは別に正統竹内文書がある
『真・古事記の宇宙』について
『真・古事記の宇宙』は著者の竹内睦泰さんが逝去されたあと、絶版になった同書を再販するにあたって著者夫人が加筆をしています。
内容は「第七十三世武内宿禰と竹内睦泰の狭間に生きて」です。
Kindle版はなくソフトカバーのみとなっています。
書店で開催された発刊イベントでご夫人がお話されていますのであわせてお楽しみください!
記事は筆者の主観が多分に含まれております。
誤解や情報が古くなっている場合があることをご了承ください。