【大子町】謎だらけの北田気二荒神社と秋葉大権現

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wata

ども!いばらき観光マイスターのwata(@wata_ibamemo)です!

大子町は県北地域にあって栃木県と福島県に接しています。そのせいか県内の他の地域と比べて独特な信仰があるんですよね。山々に囲まれているため特に山伏の活動が活発だったようです。

そんな大子町で珍しいものを発見したのでご紹介させてください。大子町の北田気にある二荒にこう神社です。

おそらく実際に参拝する方は稀なので、ぜひこの記事を参考にしてください。知れば身近な「秋葉神社」の見方が変わるのではないかと思います!

由緒

不詳
創建

明治6年/1873年
村社列格
昭和27年/1952年
宗教法人設立
大正12年/1923年
社号標建立

昭和57年/1982年
幟立建立

御祭神は豊城入彦とよきいりひこです。二荒山神社は栃木県の日光と宇都宮にあり、トヨキイリヒコは宇都宮で主祭神とされています。つまり、当社は宇都宮から分霊して創建されたと考えられます。

トヨキイリヒコは崇神天皇の皇子です。崇神天皇といえば、流行り病を鎮めるためにオオタタネコを通じて三輪山の神(オオモノヌシ)を祀ったことが『日本書紀』や『古事記』にあります。

この崇神天皇は「神」の字があてられていることから、なにか特別な天皇ではないかといわれています。でも「神をあがめた天皇」と解釈すれば、史実に即した素朴な諡号だと思うのですがいかがでしょう。

話が少し逸れましたが、トヨキイリヒコはそうした逸話のある天皇の皇子ということで、少なからず山岳信仰と親和性があるのです。もうちょっと歴史が伝わっているとよかったですね。

アクセス

駐車場はありません。近くに安全に駐車できるところを探してください。周辺はあまり交通量がなく、見通しがよいので危険性は高くありません。

名称二荒神社
住所茨城県久慈郡大子町北田気1025
駐車場なし
Webサイト茨城県久慈地方神社

境内

境内入口
境内入口

社号標が見えるこちらが境内入口です。車で登っていけるようですが、わたしにはムリ。一応途中に路肩がありました。玄人はそこですれ違うのでしょう。登山は5分程度だからそこで頑張らなくても、思います。

参道
参道

参道は基本的に舗装されています。日光がかなり遮られているのでひんやり。初めてだとどれくらい続くのかと不安を感じるかも。

明神式鳥居
明神式鳥居

明神式の鳥居。暗いところをミラーレスで撮ってしまったのでこのありさま。こういう時は補正機能が優秀なスマホのほうがキレイなんですよね。反省しました。

こちらはバッチリ撮影できました!どうですこのラブリーな狛犬は。陰陽神社の貔貅を思い起こさせるフォルムです。手掘り感満載でよきよき。この形でよしとした彫師はどんなことを考えていたのかな〜

それによく見ると阿吽の配置が逆ですね。意図したものなのか。。

社殿

社殿
社殿

最近建てられたと思われる真新しい社殿。造りとしては住吉に近いでしょうか。扉が閉まっていたので未確認ながら、おそらく中に古い社殿があるのではないかと思います。大子ではそうした造りが不思議と多い。

正面手前にあるクリアボックスにはスタンプラリーの台紙とスタンプが格納されています。数年前にはじまった企画で、町内のほぼすべての神社(氏子あり)を巡るというもの。コンプリートできるのはマニアのみ!

中の様子が見えないのはちょっと残念。でもさほど特別なものではないとして諦めるとしましょう。

境内社:秋葉三尺房(坊)大権現

秋葉神社(正面)
秋葉神社(正面)

今回、もっともご紹介したかったのはこちらの神社。神社誌だと秋葉神社とされており、御祭神は苔虫命です。イワナガヒメの別名ともいわれますが、よく分かりません。

秋葉三尺房大権現の木札
秋葉三尺房大権現の木札

しかし、それについて細かな検討は不要。なぜなら社殿にはちゃんと尊号が示されているためです。それが秋葉三尺房大権現あきばさんじゃくぼうだいごんげん

「三尺房」の部分は「三尺坊」ともいわれます。三尺坊は元をたどれば信州(長野県)の山伏。本名を周国かねくにといいます。岩野蔵王堂十二坊のひとつ、三尺坊で修行した末に火防の神へクラスチェンジしました。

なんでも三尺坊は不動明王の法を修行し、満願の日の朝に火焔の中で鳥のような翼が生え、左右の手に剣と索を持つ姿を感得。それから霊力を操れるようになり、白狐にまたがって駿河(静岡県)の秋葉山まで飛んだそう。

秋葉権現
秋葉権現(仏尊の事典P360)

本地仏は不動明王らしく、姿は飯縄権現や天狗に似ています。母親が三尺坊を身ごもった際に迦楼羅かるらの夢を見たという伝説があるので、素質というか因縁のようなものがあったのかもしれません。

県内に秋葉神社は数あれど、ここまで神仏習合時代の名残が確認できるのは珍しい。たいていは明治初期に記録を消されているので。神社誌の記述がおかしいのもそのせい?

よくある「秋葉大権現」にしていないところにこだわりを感じますね。やはり同じ山伏が憧れて持ち込んだのでしょうか。

大権現の姿は(烏)天狗と酷似しています。大きく違うのは狐の存在。狐といえば「お稲荷さま」で農耕神として知られるところ。しかし稲荷神社の総本営(伏見稲荷)では伏見山にあらわれた山の神としての性質が強い。

つまり、天狗、狐、山伏は極めて親和性が高くて、大権現はそれが形としてあらわれているように見えます。天狗は「アマツキツネ」と訓じられるほどですから。

このような神道にも仏教にも属しない「権現」は明治の神仏分離以降にほとんど見ることができなくなりました。語られるのは宗教というより民俗の分野です。触れられる機会は本当に貴重です。

余談:風神

秋葉大権現の周辺には整備された境内社が並びます。このうちのどれかは分かりませんが、風神と山の神(セット?)を祀っているとのこと。地勢的に山の神は理解できるものの風神とは何でしょうか。

御祭神は志那都比古命です。めったに耳にしない神号ですから、どういった信仰か気になるところです。花室神社(佐貫)もシナツヒコと関係していたといいますし、土地特有なのかもですね。

まとめ

・北田気の二荒神社は宇都宮から分霊したと思われる

・秋葉神社の本営は静岡、秋葉大権現を主祭神とする

・秋葉大権現は人間が修行の末に成ったという伝説がある

参考文献

茨城県神社誌|茨城県神社庁
仏尊の事典|大森義成