【タケミカヅチ伝説】上泉の草懸神社|城里町

この記事でわかること
  • 由緒とご祭神
  • 那珂川との関係
  • 御朱印のいただき方

wata

ども!いばらき観光マイスターのwata(@wata_ibamemo)です!

茨城ではお馴染みの武甕槌たけみかづち。『記紀』で大活躍するお話はご存じの方が多いかと思いますが、茨城でしか伝わらないローカル伝承ってけっこうあるんですよね。

今回はとってもマイナーですけど面白いタケミカヅチ伝説をご紹介します。城里町の草懸くさかけ神社が鎮座する上泉がその舞台となっていますよ〜♪

草懸神社とは

草懸神社

草懸神社

由緒

承徳元年/1097年
創祀
ご祭神が当地方の平定にあたり、この地の鹿島河原(現在の城里町上泉付近)で大激戦を展開されたが、劣勢となり後退の止むなきに至ったところ、村人が刈り草で祭神を隠し、祭神は難を逃れた。祭神は後に勢力を立て直され、当地方を大鎮祭されたので、村人はこの地に社殿を建て御偉徳を称え祀ったと伝えられている(頒布資料より引用)
※2月18日と伝えられる
※水戸藩の『開基帳』によれば正応元年(1288年)
元和3年/1617年
奉納
藤原利忠、太刀を奉納
元和6年/1620年
社殿修営正遷座
※4月1日
寛永15年/1638年
造営
別当久野則房、遷宮奉仕千手院、泉蔵院
※1月28日
寛文2年/1662年
配祀
雷神を配祀し社殿造営
※9月24日
弘化元年/1844年
新嘗祭
藩命によって11月卯の日に新嘗祭を斎行。以降毎年斎行
明治45年/1912年
村社列格
昭和43年/1968年
大鳥居建立
※明治100年記念

ご祭神は武甕槌命です。なんと木像の御神体があるとか。神仏習合の時代が浮かびますね。また、寛文年間から別雷皇大神を配祀しています。

非常に面白い創祀が伝えられています。ご祭神がまるで生身の人間のよう。苦戦したけど草で身を隠せたおかげで逆転勝利。このことは草の神聖視に繋がって社号にも現れているかと思います。

創祀には武甕槌命が「鹿島河原」で戦ったとあります。この辺りの河といえば境内東を流れる那珂川。那珂川は栃木の那須岳を水源とし古くは水だけでなく人と文化を運んでいました。

茨城県北の天台宗および山岳信仰は栃木から那珂川を経由して展開したと言われていますが、そうした異文化は必ずしも土着の人々と融合しなかったと思うんですよね。時には争いが起きることもあって、このような伝説として語り継がれたのではないでしょうか。

寛永年間の造営にある千手院と泉蔵院は当社南に位置する宝幢院(真言宗)の末寺です。千手院は補多洛山正福寺と号しました。補多洛山は観音菩薩の浄土。栃木の二荒山もそれに由来するという説があります。名前似てますよね。信仰の伝播は当地の寺院にも見られるかもしれません。

アクセス

水戸北ICを下りて国道123号を北へ。セブンイレブン那珂西店を右手に見たらすぐ右折。道なりに進んで突き当りを左折。そして右手に駐車場が見えてきます。

駐車場は境内西側の集会所らしき施設の前。正面の鳥居から参拝するなら数分は歩くようですね。

名称 草懸神社
住所 茨城県城里町上泉247
駐車場 あり

鳥居

大鳥居

大鳥居

駐車場からそこそこ歩いて境内正面へ。大変立派な大鳥居は明治100年を記念して建立。

しめ縄の形がとてもユニークですよね。YもしくはVの字を描いているようです。このしめ縄で思い出したのは犬卒塔婆。犬卒塔婆はY字の枝を使う犬を供養するための卒塔婆です。

犬(戌)は当社祭神の本地仏である十一面観音と密接な関係です。いずれも安産のご利益があるとされ、戌は木の三合という法則により木気(十一面観音)の祖。それに戌は十二支の11番目です。

何やら難しく感じるかもしれませんが、要はこの形のしめ縄は戌の象徴で木気=十一面観音=武甕槌命を生み出す呪物と考えられるわけです。いや、やっぱり難しいか。

とにかくこのしめ縄が武甕槌命を祀る神社にあるかは注目すべきということです。

参道

参道

参道

参拝したのはお正月なのに少々物寂しい雰囲気。ただ、参道は桜並木のようですし、春に訪れたら一変するかもしれません。

大通りから離れた場所で周辺は田畑と閑静な住宅街なのでのんびりと参拝できると思いますよ。

ところで、当社の社号って変わっていると思いませんか。「草懸」なんて言葉は初めて聞きました。草はわかりますが、懸とはどういう意味でしょう。

国語辞典では次のように説明しています。

懸の解説 – 小学館 大辞泉

1 物にひっかける。ぶらさがる。空中にかかる。「懸河・懸崖 (けんがい) ・懸垂・懸腕直筆」
2 かかげ示す。「懸賞」
3 託する。あずける。「懸命」
4 決着していない。「懸案」
5 かけ離れる。「懸隔・懸絶」
〈ケ〉心にかける。「懸想・懸念」
goo辞書

1の意味で「草を懸けて祭神を隠した」ことに由来するんでしょうね。

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古くは草掛明神と呼ばれたそうです!

社殿

拝殿

拝殿

社殿を少し離れたところから見るとこんな感じです。それまでの参道より少し高くなっているんですね。

入母屋造に赤いトタン屋根。そして賽銭箱の上には鳥居でも見かけた形のしめ縄。なかなか凛々しいお姿です。

本殿

本殿

本殿も拝殿とお揃いの赤い屋根。すご〜く見づらいのですが、本殿の四方には紙垂が4つずつ掛けられています。じつはしめ縄の紙垂も4つなんですよね。これには深い意味があるように思います。

祭祀

ここまで草懸神社の不思議な伝承と神仏習合の跡をいくつかご紹介しました。それらをさらに深堀りするためには祭祀(祭り)について考察してみます。

『茨城県神社誌』には次のようにありました。

春祭…2月18日
例祭…4月1日
秋祭…11月26日

これだけではなんとも言えないのですが、ありがたいことに古い時代の祭祀についても載せられていました。それによると古くは2月17日と18日、それに9月26日と27日に祭りがあったそう。

春祭は創建以来ずっと続けられてきたわけですね。それに2月18日は創祀の日付と同じですからまさに縁日。

旧暦2月は卯の月です。卯は五行説でいうところの木気の正位。雷神とされる武甕槌命(武御雷命)、名前に木の数を持つ十一面観音は木気に属しますので、祭祀はこの月がベスト。

18日はおそらく観音菩薩の縁日に由来するのでしょう。十一面観音と観音菩薩は異なりますが、当社に奉仕した千手院は観音霊場の補陀落を山号にするくらいですから意識していたと思います。

また17日は千手観音の縁日でこの連続した2日間で四統祭を執り行いました。詳細は不明ですが、「藁12本、閏13本を修祓」とあるので一年を無事に過ごせるよう月の数だけ祓ったのでしょう。

例祭は新暦になってから、つまり明治以降の祭りのようです。ただ、元和年間に社殿の修営と遷座をこの日にしているのでこれも縁日。

4月は巳の月。1日はおそらく水気の生数1、特に丑を意味し、金の三合を意味するのではと思います。金の三合とは「金は巳に生まれ、酉に栄えて、丑に死す」という法則。円形の五行図でそれらの十二支をつなぐとキレイな三角形ができます。

酉は金気の正位で季節では秋を意味します。秋はいきなり到来せずに夏の初め(巳の月)から始まるとされるので、祭祀でより確実に季節を巡らせるのです。

なぜ秋にそんなことするのかといえば、夏と秋の境には裏鬼門(未申)があるので、鬼門(丑寅)と同じくらい丁重な扱いが必要とされるためかと思います。

春から夏、秋から冬の変わり目ならそこまでしなくていいんですけどね。春夏はどちらも陽(気)、秋冬はどちらも陰(気)なので大きな変化が起こりにくいと考えられています。

11月は子の月。始まりと終わりを意味するもっとも重要な月です。新嘗祭や大嘗祭もこの月ですよね。26日の意味までは分かりかねるのですが。。

当社は境内社の祭りもあるので年間で非常に多くの祭日がありますが、最重要とされるのは当初から続けられた2月(卯の月)の祭りなのでしょう。

境内社

境内社

さて、ここまで何度も十二支のことを書きましたが、12の動物は後漢の時代に王允が記した『論衡』が初見だそう。しかし、十二支はそれ以前からあって動物ではなく植物の状態を表しました

種の誕生から発芽、成長、枯れるまでを12の段階で説明し、卯は「ぼう」と読んで「草木が地面に広がりおおう状態」を意味します。

蔽うと何も見えなくなりますよね。それに「草を懸(掛)けている」状態と言えるのではないでしょうか。これらは当社の伝説に通じており社号の由来になったと思います。

ただ、こうした考えの正しさよりも、当社が実際に数百年以上も祭祀を続けてきたことの方が遥かに重要です。分かった気にならずに現地に足を運んで色々と感じてみるのがいいと思いますよ!

御朱印

草懸神社の御朱印

草懸神社の御朱印

草懸神社の御朱印です。わたしがいただいたのはお正月。宮司さんが風隼神社にいらっしゃるので申し出ました。

御朱印の頒布は県神社庁のポスターで知りました。もしかしたら2022年からなので手にしている方は少数かもしれませんね。

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『茨城県神社誌』によれば当社の祭神のお目覚めは1月7日。つまり氏子の初詣が遅いので宮司さんは別神社の対応ができるのかも!

まとめ

この記事のまとめ

  • ご祭神は武甕槌命。当地の草が命を隠し助けたという
  • 古来「卯」の祭祀を重視している
  • 御朱印は祭りの日か初詣(おそらく3日まで)の風隼神社でいただける

参考文献

茨城県神社誌/茨城県神社庁
茨城の地名/編:平凡社

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