「えべっさん」を祀る西宮神社|常陸太田市

この記事でわかること
  • 神社の由緒
  • ご祭神について
  • 御朱印のいただき方

エビスさんといえば何を思い浮かべるでしょうか。ビール?プロレスラー??それとも漫画家???

日本人のほとんどが名前や見た目を知っていると思いますが、正体となるとどうでしょう。まぁ、知りませんよね。諸説あってハッキリと言えることは数えるほどです。

この記事では常陸太田市の西宮にしみや神社をご紹介します。エビスさんを祀る神社ですので、ご祭神についても参考になれば嬉しいです!

西宮神社とは

西宮神社

西宮神社

由緒

不詳
創建
里川の河口で釣り人をたらしている白衣の老翁に村人が声をかけると「わたしは西の都の釣り人です」と答えた。老翁が去ったあと、残っていた木像を見た村人は「これは西の宮の夷児に違いない」と祀りはじめた
承安年間/1171-1175年
造営
佐竹隆義により社殿造営。東福院を別当とした
慶長14年/1609年
社殿焼失
元禄4年/1691年
合祀
水戸藩主・徳川光圀により新たに蛭児命の神像が安置され、素鵞、稲荷、広田、十二所神社が合祀される
享保11年/1726年
磯出祭
多賀郡水木浜で磯出祭をはじめる
明治6年/1873年
村社列格
昭和15年/1940年
社務所新築
昭和32年/1957年
社殿類焼
昭和33年/1958年
社殿再建及び鳥居建立
平成9年/1997年
社務所改築
平成21年/2009年
神輿殿新築

ご祭神は蛭児ひるこ命(エビスさん)です。

エビスさんといえば釣り竿でタイを釣る七福神のおっちゃん。七福神で唯一の日本出身としてご存じの方も多いかと思います。福の神だけあって多くのご神徳がありますが、とりわけ豊漁と海上の安全を守護するとされています。

エビスさんはその風貌から事代主ことしろぬし少彦名すくなびこなとされることもあります。前者は国譲りの神話で釣りをしていたことから、後者は大黒さん(大国主命)と一緒にいたり舟に乗っていることなどに由来するようです。

とはいえ、えびす宮といえば兵庫の西宮神社が総本営でご祭神は蛭児大神です。社号を同じくする当社は言わば本場のえびす信仰の神社といえるのでないでしょうか。

由緒で注目は水木浜での磯出祭です。「花園山縁起」によると常陸五山に数えられる東金砂、西金砂、そして真弓神社は江戸時代の頃に水木浜で磯出祭を行っていました。おそらく当社と同日です。単なる偶然でしょうか。

おまけに五山残りの花園山は磯原、竪破山は石滝稲村浜で磯出祭をしていました。山の神の磯出よりもエビスさんの磯出の方が自然だと思いますが。。五山と当社はなにか関係あるかもしれません。

wata

創建にある白衣の老翁は蛭児命なのでしょうか。それにしてはまどろっこしいですよね。わたしは導きの神である塩土老翁を連想するのですが。。
MEMO
エビスさんの別名「夷三郎えびすさぶろう」は『日本書紀』の一書(ある説)で蛭児命が伊弉諾いざなぎ伊弉冊いざなみの三番目の子として生まれたことに由来します。

アクセス

常磐道の日立南太田インターを下りて約15分(8km)。もしくは県道349号の内堀町東の交差点を東に進み突き当りを左折すると左側に見えてきます。

道中の道路がとても狭いので、大きな車で行くならかなり注意が必要です。

駐車場はありませんが、境内東側のT字路に小さな車両であれば1台駐車できます。

名称 西宮神社
住所 茨城県常陸太田市西宮854
駐車場 なし
Webサイト 公式サイト

鳥居

鳥居

鳥居

昭和32年に火災に遭って木造の鳥居が焼失してしまい翌年にこちらの石鳥居が建立されました。

鳥居から見える境内がほぼ全体像なのですが、社号標には「村社」とありましたので、かつてはもうちょっと境内が広かったのかなと思います。昔より漁師が減ったことも関係しているでしょう。

手水舎

手水舎

遠い昔、当地は入り江に近く、岸辺には足が生い茂っていたので「葦津圷村」と呼んでいました。「圷」という文字読めるでしょうか。正解は「あくつ」。次のような意味があるそうです。

北関東では、低湿地のことを「あくつ」といった。今では低湿地というとあまりいいイメージを持たないかもしれないが、米が経済の基本だった時代には、水はけのいい低湿地は稲作に適した重要な場所だった。そのため、こうした低湿地には、「やち」「ふけ」など各地でいろいろな呼び方があり、北関東では「あくつ」と呼ばれたのだ。
「圷」…この名字、読めますか? 茨城県独特の名字!低い土地に住む人たちのため、新たな漢字を作りました|まいどなニュース

やがて圷に住んでいた人々は圷を名字とするようになり、いまでは茨城の常陸大宮市に集中して住んでいらっしゃるそうです。

わたしが気になるのはこの言葉が北関東、もっと言うと栃木県でも使われていることです。

じつは当社に近い県北の常陸五山の信仰は那珂川を伝って栃木(下野国)からきたという説があるんです。栃木の那須からはじまる那珂川は下野国で盛んだった三輪山系の信仰を茨城の大洗まで運びました。

具体的にはオオナムチ、オオモノヌシ、スクナビコナなどの信仰です。那珂川は茨城の大洗で海につながりますので大洗磯前神社や酒列磯前神社のご祭神(大巳貴命と少彦名命)はそれらと関係しているかも!

ただ。。当社のご祭神は蛭児神ですし、例祭やご祭神が似ていてもそれとは異なる独自の信仰があったと思います。

えべっさん像

えべっさん像

えべっさん像

鳥居をくぐってすぐ左手に見えるのが「えべっさん像」です。ごきげんです。ハイテンションです。その左手にあるのが由緒書き。現代語で大変わかりやすいのでぜひご覧ください。

さて、蛭児神はエビスさんとのことですが、記紀によれば蛭児神には手足がありませんので釣りをしている姿は少々不思議な気もします。

古事記だと伊弉諾と伊弉冊の初めての子供であり、神産みの前の国産みで生まれています。なので、そもそも神様なの?という疑問もあったり。(実際にはどの文献でもちゃんと神様とされています)

その疑問に答えるかのように蛭児は塩土老翁によってエビスさんの姿に変えられたなんて説もあるんですよね。いずれにせよ他の神とは違うことから、「エビス」と呼ばれるのでしょう。(エビスには異国人や変わった人という意味がある)

また、面白いことに蛭児神は天照大御神に並ぶくらい尊いという説もあるんです。豊嶋泰國さんが江戸時代の日蓮宗の僧侶・日宣の考えを次のように紹介しています。

そして、蛭児は本来的に「日児」であるとも英智院日宣は説いている。さらに、「天に二つの日出ずれば、乱の元と成る。故に百姓の田に生ずる虫の蛙という字に書き替えて、蛭児と名を諡」ったと述べている。
 蛭児の妹の大日霊貴神が天子となって、天照大神として敬い奉られている。もしそこに蛭児が立てば、天に二つの太陽が並び立つという異常な状態となり、争乱の元になってしまうだろう。つまり、もうひとつの太陽神であったが故に、蛭児は天照大神との並立を許されずに、異名を付けられてデフォルメされ、異界へ送り出された神であることを示唆するのである。
日本のまつろわぬ神々 P29

日宣は陰陽五行説や中華思想の立場から述べています。「天は常にひとつ」は中華帝国が天子とする皇帝の絶対性を維持するために編み出したとする考えがあります。

ところで、3世紀の魏志倭人伝に「卑弥呼」の記載がありますが、卑弥呼は祭祀王として神託を受けるので漢字を充てるなら日(天照大御神)の巫女=日巫女や日御子などが妥当です。「卑」の字を充てたのは二つの天を認められない中華宮廷の事情があったのではと邪推しております。

激しく脱線しましたが、「エビス」には「マレビト=異国から来訪した神秘的な存在」の意味があると覚えておくと、他の場面で耳にする「エビス」も理解しやすいかと思います。

社殿

拝殿

拝殿

入母屋造の拝殿です。鳥居、拝殿、本殿のいずれもしめ縄がありますね。しめ縄と竹が縛られているタイプでちょっと珍しいかなって思います。

竹はしめ縄を横一文字にするために利用しているようですね。たるませないことに特別な意味があるのでしょうか。

参拝者を迎えるように拝殿の扉が開いていました。たまに参拝の最中に勝手に入っていいのかなと思うのですが、こうしていただけると安心してお参りできますね。

本殿

本殿

本殿は精巧な彫刻と味わい深く錆びた屋根が見事です。

摂社

摂社

本殿裏に並ぶのは摂社です。広田神社を見つけてしまいました。総本営の分離元ですね。当社の場合はご祭神が誉田別尊とされていますので八幡社の性質と考えてよいのではないでしょうか。

御神木

御神木

県内でエビスさんといえば少彦名命のことです。蛭児神をご祭神とする神社はわたしの記憶ではここだけで、しかも非常に興味深い由緒を持っているので貴重です。

少々アクセスに難があるものの市街地から離れていませんので、近くにお立ち寄りの際にぜひ足を運んでみてください!

御朱印

西宮神社の御朱印

西宮神社の御朱印

御朱印は賽銭箱の近くに書き置きが用意されていました。初穂料は賽銭箱に納める仕組みです。

書き置きは書き手が違うのか何種類か書体がありましたのでお好みの御朱印をいただきましょう♪

まとめ

この記事のまとめ

  • 常陸太田市の西宮神社は蛭児命を祀る神社
  • ご神体の木像は里川で見つかった
  • 御朱印は賽銭箱付近に置いてある。初穂料は賽銭箱へ

参考文献

茨城県神社誌/茨城県神社庁

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