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潮来市のフレンドリーなお寺。潮音寺をご存知でしょうか。
はじめてお伺いしたのはお盆。美しいと評判の万燈会を見るためでした。ウワサ通りのステキな行事でしたが、ふだんからお参りしたくなるお寺なんです。
潮音寺は潮来市の日の出にある法相宗のお寺。奈良県の薬師寺の東関東別院です。
薬師寺は法相宗の大本山。国宝が多数あり、ユネスコの世界遺産にも登録されています。潮音寺のことは薬師寺の公式サイトにもちゃ〜んと記載されていました♪
薬師寺の伝統を受け継ぎ写経と法話で教えを広めています。(公式サイトにありませんが)特定の檀家を持たず、葬儀をしないそう。由緒については梵鐘に以下がありました。
水雲山潮音寺銅鐘記
この地に六十万坪の新しき町つくりをするにあたって その地の衆人相集いこの新市街地を心のある町としたいとの念願から 中央に観音堂を建立し水雲山潮音寺と名称した
橋本登美三郎撰文
水雲山の名はこの地よりはるか太平洋を望めば水辺雲につらるるの景観あり よってこの名称されたるものである
鐘の正面に みほとけの久遠の鐘の音あまねくば荒振る世とてやはらぎあるべし
と作したのは世の心のざわめきを観世音の鐘の音により人心の和きを求めんがための祈りである
潮音寺は新しい町の中心に建てられて、観音さまによって人の心を和まそうと考えられたんですね。
ご本尊は慈母観音。また、薬師寺の本尊である薬師如来は無量寿殿に安置しています。
梵鐘に名のある橋本登美三郎さんは鐘を奉納したときの願主です。
アクセス
水郷潮来あやめ園から車で10分ほど。住宅街の中にどーんとあります。駐車場が広くて参拝しやすくなっております。
名称 | 水雲山 潮音寺 |
住所 | 茨城県潮来市日の出4丁目7 |
駐車場 | 無料あり |
Webサイト | 潮音寺公式 |
境内
境内に入る前に気になったのはこちら。
ポケモンGO容認。。仏さまのお恵みとは知りませんでした。
場所によっては禁止していることもしばしば。歩きスマホになりがち、交通の妨げになる、そもそもゲームする場所じゃない。。
潮音寺ではそれらに注意して「ゲットだぜ!」はOK!さすが慈母観音。寛容です。
他のブログでは梵鐘や松の木(大王松)などを紹介していますが、わたしの注目はサッカーのゴールポスト。。
寺務所で尋ねてみると境内はお隣の幼稚園がサッカーや運動会で利用するそう。身近な関係を大切にしているとお話されていました。
本堂
立派な本堂です。中には数名の方々と僧侶がいらっしゃいました。この日は第4土曜日。定例の観音縁日法要と法話をされていたのでしょう。
ご年配の方が多かったと思います。潮音寺は小さな子どもから大人まで、じつに幅広い年代の方がいらっしゃいます。写経や法話、行事を通してよい関係を築かれているのが伝わってきます。わたしも明るくお声掛けいただきました。
公式ブログを拝見すると東日本大震災で大きな被害があったことがわかります。建物や外壁は崩れ、地面にはひびが入りました。震災から7年を過ぎ、見違えるように整ったのは大きな支援があったため。境内には感謝の言葉がありました。
本堂ではお正月に吉祥天の画がご開帳されます。同画は本山の薬師寺がお正月に公開するものの複製です。
三十三観音
震災で崩れた三十三観音も復旧。観音さまに合わせて三十三種のボタンが植えられました。お参りの際にボタンとの出会いも楽しめるようにです。
開花時期は4月下旬。「国際花と緑の博覧会」で優秀賞を受賞したほどなので、きっとステキな姿なのでしょう。
不動堂
本堂右手に見えるのは不動堂。中には浪逆不動明王が安置されています。通常、扉は閉じられていますが、万燈会などのお祭りの際にはご開帳され一般の方でも拝観できます。
迦楼羅炎をまとった勇ましい姿です。真正面から見ると立体的ですが、実際には像というより版画のように板を削って作られているようです。
御朱印には「波切不動尊」とあるので、遣唐使として海をわたった空海を助けたという不動尊に由来しているのでしょう。「浪逆」は霞ヶ浦の一部なので地元漁師の水難除けに祈願されると思われます。
ところで、当寺の宗派である法相宗も密教の教義を取り入れているのですね。台密・東密以前から日本に広まっており、関東では徳一が最澄・空海と論争しているので意外な印象を受けました。
潮音寺は他のお寺と違った点がいくつもありますが、地域とのつながりを感じられます。平日は幼稚園から賑やかな声が聞こえるかもしれませんが、穏やかな心でお参りができます。
2023年現在ではこちらの御朱印も頒布されるようになりました。
浪逆鹿島神社
境内の北側、慈母学園(こども園)東には浪逆鹿島神社が鎮座しています。コンパクトながら鳥居、社号標、手水、狛犬が揃っており、かなり丁寧に造られた印象です。
潮音寺のブログを読むと地区の方のほかに潮来の政治家の方々も多く参列して神事を行っています。境内の立て札にある寄進者の芳名には鹿島神宮の宮司も見えました。日の出地区の鎮守社として崇敬されているようです。
境内にある日付からすると造営されたのは平成24年(2012年)頃でしょうか。震災という苦難を経て、頼れる存在が新たに誕生したのかもしれませんね。
ちなみに社殿はシンプルな切妻造りではなく、棟持柱のある唯一神明造でした。内宮・外宮の様式だったのでちょっとびっくりです。
7月下旬には例祭を開催しております。
花の寺
潮音寺は花の寺。境内ではさまざまな花が育てられています。
春から順に、ボタン(4月中〜5月上旬)、アジサイ(6月〜7月)、ハス(7月〜8月)、ユリ(7月)、皇帝ダリア(11月)。わたしが訪ねたときは11月下旬でしたので、皇帝ダリアがありました。
少し散っていたので中旬が見頃だと思います。寒い時期に鮮やかな花を楽しめてよかった♪
今後はバラを育てるとか。。周辺にお住みの外国人の方が協力して準備をしていました。バラですと見頃は6月や10月頃でしょうか。足を運ぶのが楽しみです!
東日本大震災の影響
不動堂のすぐ近くには東日本大震災のときの境内の様子が掲示されていました。潮音寺のある日の出地区は市内では震災の影響が大きかった地域で特に液状化が酷かったようです。
地面が歪み寺号標が明らかに傾いています。近年になって続々と整備される境内を見るとそんなことはまったく感じさせないのですけれど。
三十三観音の近くにある六方櫻の碑はかつてあった桜並木の名残です。震災によって倒木してしまったため、今はその姿を思い描くことしかできません。
「六方」とは東西南北に上下を加えた方位のことです。六方礼拝経に由来し、それぞれに両親と先祖、師、夫婦・兄弟、先輩・友人、生産者、神仏があてられています。自身を支える存在を忘れずに、ということですね。
御朱印
2024年現在、御朱印や御守りなどの頒布は境内の入口そばにあるこちらの建物で受け付けています。向かって左側の窓口からお声掛けください。
御朱印は以下の4種類。原則的に書き置きになっています。
- ご本尊「慈母観音」
- 奈良薬師寺 東関東別院「薬師如来」
- 仏足石「南無仏」
- 海難消除「波切不動尊」
その他、万燈会や記念行事に限定の御朱印が頒布されます。限定御朱印はご住職の書く公式ブログに情報が載りますのでぜひご覧ください。
万燈会はお盆の伝統行事。境内に約10,000個の万燈を並べ、先祖供養や世界平和の祈願、日々のできごとに感謝します。
2019年以降はお盆の時期の3日間。夜6時から10時頃まで点灯します。どんな宗教・宗派の方でも参加OK。近隣にお住まいでなくても大丈夫です。
ただし、雨や風の場合は中止となりますので、もし開催するかご心配であればお問い合わせください。
万燈は毎日少しだけ違いがあるんです。この日は日の出小学校のマスコット・サニーちゃん。子どもたちが並べたようです。かわいいっ!
さらにコンサートもあるんです。この日は井坂斗絲幸社中・喜楽座が登場。和太鼓と三味線でとても賑わっていました。
司会者は「きょうはおまつりということで。。」幽玄な会場ですが、じつはノリノリです♪
茨城新聞がYoutube動画を公開しています。動画は2013年のものですが、18年も同様ですのでご参考に。
万燈会は12月31日(大晦日)の夜11時にもあります
万燈料の奉納
万燈会の存続のため、2021年から境内に入るために万燈料を納めることになりました。
1個500円。もちろんいくつでも奉納することができます。わたしは過去の傘下分もあわせて3個奉納しました。テーブルで願い事と名前を書いたら万燈を設置。本堂の近くが参加者用の設置場所のようです。
万燈会はもともと先祖供養の行事ですが、現在は東日本大震災や新型コロナウィルスで亡くなった方への供養も行っております。
美しい光景を楽しみ人々の協力に感謝しながら静かにお参りしましょう。
2023年3月は東日本大震災から12年となりました。この日、潮音寺では被災者の十三回忌法要である「花あかり」が開催されました。
不幸中の幸いということで周辺に死者は出なかったそう。しかし、潮音寺のある日の出地区は液状化が激しく、境内も大きな被害を受けました。それにより再建された建物もいくつもあるといいます。
大きな苦難から立ち直った今だからこそ被災者への供養や新たな災害対策もできるというもの。ご住職や来賓の方々の挨拶を伺いそのように感じました。
行事の中心は法要でしたが、潮来ゆかりの歌手である橋幸夫さんのコンサートや恒例の万燈会も行われて明るく賑やかな会場でした。やっぱりポジティブな気持ちがなければ何事も頑張れませんよね。元気をいただきました。
・潮音寺は希少な法相宗の寺院
・お盆と大晦日の万燈会が有名
・御朱印は4種類。万燈会等の限定もある
記事は筆者の主観が多分に含まれております。
誤解や情報が古くなっている場合があることをご了承ください。
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