wata
いつの時代も人生最大のイベントといえば出産ではないでしょうか。特に女性にとっては命がけといっても過言ではありません。
そんな出産や前後の子宝、子育てを支えていたのが、鉾田市の塔ヶ崎にある十一面観世音菩薩です。寺号を観音寺といいますが、「観音さま」のほうがきっと知られているかと思います。
江戸時代中期から住民によって支えられている貴重なお寺です。参拝者を迎える姿勢はバッチリ!特にお子さんをお望みだったり出産を控えている方に知っていただけたら嬉しいです。
観音寺の由緒を境内でいただいたパンフレットより引用します。
塔明山観音寺の起源は定かではありません・・・その昔お産は女性にとりまして医療は進んでいない時代でしたから大きな試練となりました
そんな世相のもと地元民が観音寺を建立し十一面観世音を奉り女性の安産を祈願したのが事の始まりと言われております。
江戸時代の中期より今日に至る迄の長い年月の時を菩薩様の深く大きな慈悲とご加護により参拝者をお救いしてきました歴史と由緒ある観音様でございます
ご縁日には法要が営まれ、近郷近在はもとより遠く県外からも参拝尺が訪れ大いなる賑わいを見せております
御本尊はもちろん十一面観世音菩薩(十一面観音)です。茨城では鹿島神宮のご祭神である武甕槌大神の本地仏としても知られていますが、当寺ではそうした関係は語られません。
あくまで十一面観音の子宝、安産、子育てといったご利益を授かろうとする方々の信仰によって支えられ、広範囲に渡って参拝者を集めました。
また当寺の最大の特徴は創建当初から無住(住職がいない)であったことです。そのため特定の宗派に属することがありませんでした。
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アクセス
名称 | 塔明山 観音寺 |
住所 | 茨城県鉾田市塔ヶ崎946 |
駐車場 | あり |
Webサイト | なし |
大縁日
この日は年に二回ある大縁日でした。大縁日は1月21日と8月21日。一年でもっとも寒い時期と暑い時期といえるかもしれません。
この日程は旧暦から続けられており、なにか特別な理由があると思われます。しかし詳しい理由までは地元の方々でも把握していないようでした。
吉例ともいえる先例をひたすら積み重ね、それが今では伝統として特別な意味を持っているのでしょう。縁日に土日は関係ありませんから、関係者の準備はきっと大変かと思います。
先人たちが残した遺産でもありますから、可能な限りは続けていただきたいし何かしら助けになりたいですね。縁日が気になる方はぜひカレンダーにメモしておいてください。
10年ほど前になりますが、茨城新聞が縁日の様子を取材しております。やっぱり女性が多いようですね!
参道
通常は境内に駐車可能です。縁日の場合は周辺に露店が並びますので車両通行止めの措置がとられます。臨時駐車場を利用しましょう。徒歩で5分ほどかと思います。
駐車場は通行止めの手前に臨時で設けられますので迷うことはないでしょう。40年ほど前はこの通路が露店で埋め尽くされ、まっすぐ歩けないほど混雑していたのだとか。
二十三夜尊
境内に入ってまず正面にあるのは二十三夜尊です。いわゆる月待ち講の紀念碑が建てられており、後ろにあるのは桂岸寺(水戸市)の御本尊である勢至菩薩の掛け軸です。
じつはこの桂岸寺との関係から当寺は真言宗の寺院かと思っていました。まったくの無宗派の寺なんて聞いたことがありませんからね。
地域的には曹洞宗を信仰し、それ以前は天台宗だった時期があるとか。しかしこの二十三夜尊はそうした信仰からは説明がつきません。きっと調べれば歴史的な経緯があるのでしょう。
ちなみに勢至菩薩は古くから「午」の守り本尊といわれておりまして、午年に生まれた方が守護神として御神影をお求めになることが多かったそうです(今ではそれを知る人が少ない)。
御神影はいまでも桂岸寺の授与所で頒布しておりますので、興味のある方はぜひそちらにも足を運んでみてください。
本堂
なかなか立派な手水舎です。まずは手を清めてから石段を昇りましょう。妊娠されている方もいらっしゃるので石段にはしっかりと手すりが設けられていました。
お寺には必ず山号があり、当寺の場合は塔明山といいます。山は仏のような尊いものがいる場所ということですね。これは山というより高い場所に祀ると捉えたほうがよいかもしれません。
当寺でお守りを授かると、「この御守は神棚もしくは床の間など一段高い所に奉安して下さい」と説明を受けます。「尊いものは上」はこんなところにも見えるわけです。
本堂は入母屋造。寺紋として卍が見えますが、瓦には右三つ巴がありました。神仏が混ざっているようにも感じましたが、あまりこだわりはなさそうですね。
出産関係のほかに交通安全のご利益もあるというので念入りに祈願させていただきました。事故はもうコリゴリ。運転気をつけますので、なにとぞこの身を御守りくださいまし…
この日は午前中が豪雨で参拝者はまばらでした。午後になって雨脚が落ち着くと、拝殿前には行列ができるほど。たまたま日曜日であったので地元の方は行きやすかったのでしょう。
大縁日は茨城の県民手帳に書かれるほど有名だと境内で耳にしました。以前はバスで大勢の方が参拝していたとも。当寺に限りませんが、少子化の時代なので以前と変わらずとはいきませんね。
そうした事情もあるので、なるべく大勢の方に知ってもらえるようにメディアはうまく活用していきたいとのこと。じつはわたしが縁日に興味を持ったのは、エフエムかしまの録音でした。
録音の内容は鹿行ナビ(塔ヶ崎十一面観世音)で聞けますのでご参考に。ちなみに後ほど紹介する腹帯の写真なども掲載されています。改まった取材じゃないとなかなか撮影できないものばかり!
今では多くのメディアがさまざまな情報を流していますから、知ってもらうことは非常に難しいといえます。これをお読みになったのもなにかの縁かと思います。もしお休みの日にでも思い出しましたらぜひ足を運んでみてください。
御腹帯
安産祈願といえば腹帯。鹿島神宮でいうところの常陸帯にあたるものが当寺にもあるのです。
中に収められている布の色は生まれてくる男女をあらわしているそう。なんとも神秘的ですよね。こうした男女を色によって分ける考え方は意外と広く浸透しています。
それに戌の日のお参りも耳にしたことのある方は多いのではないでしょうか。犬のお産は軽いからそれにあやかろう、というわけです。
そういえば「戌」は十二支の中で十一番目です。いみじくも十一面観音と同じ数字を持っていますから、両者の信仰が似るのはなにか必然的な理由があるのかもしれませんね。
また、参拝者が持ち込んだ腹帯に朱印を捺す風習も面白いところ。鹿行ナビの写真を見ると十一面観音を意味する種字(梵字)のようですね。
ちなみに戌参りの場合も生後間もない赤ちゃんの額に「犬」などと書く地域があります。「しるしを付ける」ことによって災厄を退けたり健康に育つといわれています。
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御朱印
観音寺の御朱印です。ふだんは書き置きですが、大縁日の場合は直書きをいただける場合があります。何人か書き手がいらっしゃるようで書体はその時によりさまざまです。
こちらが通常の御朱印です。受付時間は10:00-16:00、5月〜7月は9:00-16:00です。途中にお昼休憩を挟みますので、時間帯によっては不在の場合があります。
・御本尊は十一面観音。子宝、安産、子育てのご利益があるといわれる
・特定の宗派に属しない。無住の寺で地域の方々によって守られてきた
・御朱印は基本的には書き置きでいただける。大縁日であれば直書きの場合がある
記事は筆者の主観が多分に含まれております。
誤解や情報が古くなっている場合があることをご了承ください。
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