常陸國總社宮の御田植祭|石岡市

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wata

ども!いばらき観光マイスターのwata(@wata_ibamemo)です!

2023年5月5日石岡市の常陸国総社宮ひたちのくにそうしゃぐうでこれまでコロナ禍で見送られていた御田植おたうえが行われました。

数年ぶりの開催という事と総社宮のホームページで非常に美しいシーンが動画で紹介されていましたので私もぜひ見てみたいと思って会場に足を運びました。

実際に行った方は少ないかと思いますので、そのようすをご紹介いたします。会場の規模的に希望者みんなが行くのは厳しいので興味のある方々の参考になれば幸いです。

常陸國總社宮の御田植祭とは

会場の八郷の風景

会場の八郷の風景

会場のアクセス

当日は気持ちの良い時間に遅刻しないように少し早めに家を出ました。会場の周辺は田園が広がっていますので駐車不可。公式サイトで紹介されていた根子屋の公民館に車を止めて15分ほど会場まで歩くことに。公民館の場所は上記の地図を御覧ください。

会場に正確な住所はありませんが、總社宮の公式サイトでは「根小屋献穀田(石岡市根小屋682付近)」とされています。これらは毎年必ず同じとは限りませんので、都度公式サイトの情報を参考にして足を運んでください。

駐車場から会場への道中はとてものんびりした雰囲気に癒されながら会場まで歩みを進めました。この季節だと歩くのがまったく苦にならず気持ちがよかったです。

これから実際に行く方はGoogleマップで公式サイトの住所を入力すると場所がわかると思います。また会場にはお田植え祭の看板が立っていますので迷うことは少ないでしょう。

そういえば会場入口に警備員さんが案内しておりますので聞いてしまうのも良いと思います。警備員さんの目的は車止めみたいですけどね。

会場のようす

御田植えは写真中央の奥のあたり

御田植えは写真中央の奥のあたり

私が到着したのは午前9時ごろ。かなり早めに着いたと思ったのですが既に到着している方々は多数。特にカメラマンが多かったですね。皆さんはこれまで何度も撮影しているようで ほとんどがベテランのようでした。

9時半ごろにいったん神職や早乙女さおとめが登場。今年に限っては事前に流れを確認するとのこと。数年ぶりなのでいくつか確認が必要なのでしょうか。

また、祭りを撮影するためのドローンが飛び始めました。ハイテクだぁ。着々と準備が進められていき、なぜか私まで緊張感が高まってきました。むかしこういうお仕事してたせいかも。

御田植祭の祭壇

御田植祭の祭壇

本番までに少しお時間があったので祭壇を見させていただきました。中央に御幣と神撰。向かって右手に鍬と赤いタスキ、竹棒の幣。

苗と玉串

苗と玉串

左手に見えるのはお田植え用の苗です。苗は手前にも別に添えられていて、そちらには玉串も添えられていました。

来場するご近所の方々

来場するご近所の方々

定刻が近づくと近所の方々も続々といらっしゃいました。小さな子を連れたご家族もよく見ましたね。

神職と早乙女

神職と早乙女

10時を少し過ぎてから神職や早乙女たちがやってきました。赤い傘がなんとも風流です。 晴天による美しさもあると思いますが、雨でも絵になりそう。ちなみにお田植え祭は荒天でなければ開催されるそうです。

お田植え前の神事

お田植え前の神事

鍬入れ

鍬入れ

祭りの始まりは神職による神事から。 修祓にはじまり祝詞が奏上されると、次に田んぼに入って鍬が入れられました。田植えの段階なので鍬は不要だと思いますが、 これには特別な理由があるのでしょう。呪術的な意味合いがあるのかもしれませんね。

続いて、早乙女たちが田んぼに足を踏み入れていきます。女性たちのほとんどが20歳以下でしょうか。普段田植えをする子たちばかりではないと思いますので、足取りは少々おぼつかない様子。

早乙女の御田植え

早乙女の御田植え

早乙女が一列に並んだらよいよ始まりです。 スピーカーから音頭が流れ、恐る恐るのスタート。 事前のリハーサルで注意事項を私も聞いていたのですが、慌てて動いて転ばないことが1番大事だそうです。そりゃそうですね。

来場者は早乙女のご家族や近所の方々がたくさんいましたが、カメラマンはそれと同じかより多かったかもしれません。この貴重な機会を残しておきたいと言うことなのでしょう。

子どもたちも参加しての御田植え

子どもたちも参加しての御田植え

早乙女の田上から10分ほどすると、今度は子供たちの田植えです。こちらは早乙女よりもだいぶうるさい。。いや賑やかに引率されながら田んぼに入っていきます。

田植はそれからさらに15分ほど続き、先に早乙女たちが苗を植え終えて上がっていきます。祭りが締められたのは10時40分頃。開始がちょっと遅れたので全体で30分ほどでしょうか。

撤収

撤収

昔はどの地域でもやっていたと思いますが、今では数えるほどです。また、その少なさから比較的メディアに取り上げられることが多いので、祭り自体は比較的多くの方が知っているかもしれません。

とはいえ、実際に会場で見たことのある方は極めて少ないことでしょう。わたしも近津神社(大子町)でしか見たことがありませんでした。県南では貴重な機会なので連休中にお時間のある方はぜひ足を運んでみてください。

五行説による考察

田植えは日本古来の行事でありながら人々の生活には欠かせない存在です。食べ物を育てることは生きることそのものといっていいでしょう。大変尊いことですから、それが神事とされたとしても不思議はありません。

しかし、御田植祭にはいくつか決まったルールがあって、単に田植えをするだけではありませんから、そこには古代の人々の思想が凝縮されているのではと思います。

わたしとしてはそれが五行説と易の思想によるものだと見ています。こうした考察は比較的珍しいもので、これをお読みいただいている方々が身近な神事を見直すきっかけになるかもしれないので書き残しておきたいと思います。

五行説と易はいずれも古代中国に発祥した思想で自然界の法則を説明したものです。五行説は万物を木火土金水の5つの気に分類し、その関係性や働きを説明するというもの。

易も基本的には五行説と同様でして、八卦や六十四卦の卦と呼ばれる記号によって説明します。八卦の場合は五行説を取り込んでいますので、より高度で複雑です。

その内容は儒教の経典に数えられる『易経』に記されているものの、本来は特定の立場に限らず古代中国の知識人の間で知られていました。そのため道家の中でも八卦は重視されています。

そのような視点で見ていくと田植えとはどういうことなのでしょうか。五行説で田植えに特に関係するのは木気・火気・土気の3つです。

木気は植物の気で生物全般に影響します。火気はそのシンボルに太陽がありますから、植物に限らず成長を促す働きを持っています。土気はそれらの基礎となるような気ですね。土気の本性は稼穡、すなわち種まきと収穫ですから農業でもっとも重要な気といえるでしょう。

これらの気はすべて無視できない存在ですが、御田植祭に限定するならば火気に注目です。なぜなら、御田植祭の日程は5月5日の端午の節句と決まっているからです。

「端午」は「はじめの午の日」。その日が5月ということは、午の月の午の日を意味します。午は五行説では盛んなる火気。同じ気が重なると強化(比和)されるので非常に強い火気の日といえます。

田植えは苗を植えるわけですから木気(生命)はすでに生じています。また、種まきや収穫とも違いますのでやはり苗の成長を願う火気の祭りとして間違いないのでしょう。

面白いのは祭りの中心に女性がいることです。五行説では人を「裸の動物」として土気に配当します。しかし八卦では性別や年齢によってより細かく分類しています。その中で火気に分類されるのは「中女」、すなわち15〜30歳頃の女性のことです。

この年齢は人生を4等分した場合の2番め期間と捉えてください。人生60年ならば1期間あたり15年。女性ならば少女、中女、長女、母と進んでいき、0〜15、15〜30、30〜45、と区分できます。

御田植は火気の日に火気に配当される中女によって行われます。火気は五行説の相生(火生土)の法則によって土気を生じさせますので、稲を育て収穫へと導くわけです。

このように考えていくと、祭りのはじめに鍬を入れたのは「金剋木」によって木気を弱めたともいえます。木気は「木剋土」といって土気を弱らせる働きがあるからです。これから土気を生じさせるならしばし弱っていただきたいところなのでしょう。

なお、五行説では五気に対して色が配当されています。木=青(緑)、火=赤、土=黄、金=白、水=黒です。早乙女たちが必ず赤いタスキを身につけるのはそうした理由があるのかもしれませんね。

こうした説はわたしの憶測に過ぎませんし、五行説や易は科学的ではありません。しかし、昔ながらの伝統を引き継いだ行事は昔の思想をそのまま伝えている可能性が高いと思います。

もしかしたら千年以上さかのぼる哲学が現代でも垣間見えているのではないでしょうか。解釈はひとそれぞれですが、五行説や易はある程度の決まったロジックがあって面白いのでお時間あればぜひ勉強してみてくださいね。

御田植祭の御朱印

常陸國總社宮の御朱印(御田植祭限定)

常陸國總社宮の御朱印(御田植祭限定)

お田植え祭の御朱印です。会場では頒布しておらず、総社宮の本社でいただけます。

御朱印は本来ご縁があって授かるものですから御田植祭に立ち会ってこそなのかもしれません。しかし、会場の規模を考えればそうはいきません。 会場に思いを馳せながらいただけば良いのではないでしょうか。

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