wata
- 小栗内外大神宮と伊勢神宮の関係
- 太々神楽について
- 御朱印のいただき方
日本の神様といえばなんでしょう。だれでもひとつは言えると思うのですが、それは天照大神ではないでしょうか。
”天岩戸の神話”で知られる高天原を統べる神。神棚の中心に祀られ、日本全体の氏神です。せめてこの神様だけは知っておいてほしい。
でも、茨城で天照大神をご祭神とする神社は意外と少ないと思いませんか?そこでこの記事では天照大神をご祭神とする筑西市の(小栗)内外大神宮をご紹介します。
秋の例祭にあわせて参拝しましたので、そのとき拝見した神楽についてもどうぞ♪
小栗内外大神宮とは
由緒
当社の本殿は伊勢神宮と同じで内宮と外宮の2つあります。内宮は主祭神として天照大神(大日霊貴神)、相殿神として天手力男命および万幡豊秋津姫命をお祀りしています。
外宮は豊受大神(豊宇気毘売神)が主祭神で相殿神が瓊々杵尊、天児屋根命、天太玉命です。
小栗内外大神宮は筑西市の小栗に鎮座する神社です。住所の「小栗一番地」からその土地にとっての重要さがわかりますよね。そういえば笠間稲荷も一番地でした。
由緒を参拝時の配布物から抜粋します。
小栗内外大神宮の創建は、社伝では大同元年(806) 頃とされています。この神社は、往古の伊勢神宮領(御厨)に勧請された神明社で、神宮と同じく内宮と外宮の両本殿を祀っています。
小栗の地と伊勢神宮との関わりは、今から約920~30年前の平安時代の後期のころには御厨(伊勢神宮の領地・神領として特産物や年貢を納める)となったことが記録に残され、常陸国内でも由緒ある地域(小栗保、小栗御厨とも呼ばれた)として伊勢神宮と深い関係を持ってきました。
かつては59ヶ村に氏子がいて、一の鳥居は下町谷畑油店のあたりにあったそうです。参拝は鳥居をくぐってから20分近くかかることに。。とても広く信仰されていたんですね。
正式名称は内外大神宮で小栗と付くのは地名に由来します。当地の方々は親しみを込めて「お神明さま」と呼んでいます。
そして忘れちゃいけないのが小栗氏との関係です。先ほどと同じ配布物から抜粋します。
御厨(保)としての管理者・支配者には「常陸平氏」の流れを汲む小栗氏が入部し、代々その職を世襲していたものと思われます。中でも小栗重成は原頼朝と行動をともにしたことが鎌倉時代の『吾妻鏡』に記されています。
小栗氏の最後の武将が小栗助重。”小栗判官”で知られる筑西市のスーパースターなのです!
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【2019年情報あり】第28回 協和地区の小栗判官まつり|筑西市
駐車場
参道の手前のちょっとしたスペースに駐車する方が多かったのですが、神社の駐車場が少し離れたところにありました。
参道まで数十メートルでしたし、こちらの方がずっと広いのでオススメです。ほとんど停めている方がいないのが謎でしたね。。
境内
当日の境内です。手前に神楽殿、奥に拝殿、その裏側少し離れた場所に本殿(内宮・外宮)があります。
ちくナビを参考に12時30分前にお伺いしましたが。。はじまってる!?
近くに張ってあるポスターを見たら、はじまりの時間が12時に書き換えられていました。来年以降、神楽をすべてご覧になりたい方はそれくらいの時間に参拝するといいでしょう。
鳥居から100mくらい長い参道がありました。その先の石段をのぼると当社のパンフレットが配布されており、神楽についてわかるようになっていました。これは嬉しい心遣いですね。
更に詳しい内容は100円の初穂料でいただける専用のパンフレットに有りました。もちろんゲットしましたよ〜!
拝殿
拝殿は昭和60年(1985年)の秋の例祭で新営されました。
それまでの拝殿は明治35年(1902年)で台風の被害を受けたものを修繕して使っていたそうです。これだけ大きな建物ですから大変な費用です。新営には589名の氏子が寄付をしました。
内宮本殿・外宮本殿
内外大神宮の本殿です。手前(右)が内宮、奥(左)が外宮です。国の重要文化財に指定されています。
前述の通り延宝7年(1679年)に建立。いずれも神明造の銅板葺き。昭和50年(1975年)までは箱棟茅葺きでした。
内宮は千木が内削で鰹木が10本。外宮は外削で鰹木が9本。外宮が内宮より少し小さく造られているのは伊勢神宮と同じです。
茨城県の神社は一の宮である鹿島神宮の影響か鹿島神社をよく目にします。数的には稲荷社がもっとも多く、大神宮は数えるほど。しかしながら天照大神をご存じない方は少ないでしょうし、神話でも活躍しますからぜひ多くの方に知っていただきたいですね。
本殿の裏側には数々の境内社。石碑には神楽師が28社を奉納したことを示す石碑がありましたが、明らかにもっとあります。飛び地にもあるそうなので神職以外に把握できてる方はいないかも。。
各本殿にはそれぞれ御門があり、附指定の文化財です。
御遷殿
拝殿の右手にあるのが御遷殿。一間社流造。室町時代の建築様式で天正2年(1574年)に建立されました。
美しい茅葺きですよね。本殿と違ってこちらはかつての姿が維持されています。
御遷殿は「遷しの宮」とも呼ばれ、神事で重要な役割があったそう。一時的に神様が鎮座するのですから、神社ではなく別の場所にあったかもしれませんね。
本殿とあわせて国指定重要文化財です。
太々神楽
内外大神宮の太々神楽は県指定の無形民俗文化財。江戸時代中期にはじまったとされる土地柄、人柄の現れる伝統芸能です。
岩戸神楽と呼ばれる神話に基づいた神楽で神々の功績をたたえ、豊作と厄除けを祈願します。どなたでも楽しめると思いますが、ちょっと予習しておくといいですね。
由緒について茨城県教育委員会のサイトから引用します。
寛延4年(1751)山城国愛宕郡三嶋神宮宮司らにより内外大神宮宮司に伝授されました。その後、伊勢神楽師の指導を受け、小栗三喜が舞に工夫を凝らすなどして12神楽36座を成立させたといわれています。12神楽とは12の場面のことで、36座とはこの12の場面に登場する36柱の神々のことであり、番外に八岐大蛇退治(やまたのおろちたいじ)の無言劇があります。
小栗内外大神宮太々神楽/茨城県教育委員会
太々神楽を見ると伊勢神宮をお参りしたことと同じくらいのご利益を得られるとされています。「太」は伊勢神宮の「代」わりになるという意味なんですね。
秋の例祭では神楽の一部を演じます。それでも2時間以上ありましたので、全部やったら大変です。。
神楽は例祭の4月21日と秋祭の11月10日となっていますが、日曜日以外であればその日付の直前の日曜日に見れます。つまり前倒しされます。
2019年は11月10日がずばり日曜日でした。ちなみにむかしは10月10日だったそうですよ。
秋の神楽は昼12時からスタートしました。毎回多少前後するので早めに行きましょう。また告知は周辺地域の掲示板などに張り出されるためネットには情報がないかもしれません。
【3〜7座】 五行神楽
5人がカラフルな着物で舞うのが五行神楽です。五行は古代中国から渡来した五行説に由来するのでしょう。自然界は「木」「火」「土」「金」「水」の5つの要素によって成り立っているとする思想です。
神楽ではそれらの要素を担う日本の神として舞うことで天災を除け、人々の幸福を祈願しています。
5つの要素はそれぞれ久々能智命(木)、加具土命(火)、埴安命(土)、金山彦命(金)、罔象女命(水)です。神楽は埴安命を中心に舞われます。
しゃんしゃんと鈴を鳴らしてゆっくりと流れるような舞。ずっと見ていると動きがわかるので楽しめますよ♪
【8〜9座】 陰陽神楽
陰陽神楽。この場合の陰陽とは伊弉諾命と伊邪那美命の夫婦のことです。陰が女性の伊邪那美命、陽が男性の伊弉諾命ですね。
二神の舞は極めて興味深いもの。手に持っているのはおそらく鏡と榊。時折それらをぶつけあわせながら、周囲を照らすようにぐぐぐいっと腰を捻ります。
鏡は神社の御神体としても知られていますが、時代を遡れば古墳の埋葬品ともされました。最大の特徴はその輝きにあるかと思います。しかし、わたしはそれに加えて丸形であることも重要じゃないかと思うんですよね。
それが太陽のシンボルであり、生命の源ととして古代から信仰されたのではないでしょうか。神楽のムーブにも現れているんじゃないかなーと考えつつしっかりと拝観させていただきました。
【17〜19座】 稲生神楽
コミカルな神楽が稲荷神楽です。ご陽気な天狐が鍬で耕し、白狐が種を巻まき、稲倉魂命が刈り取る仕草を舞います。
天狐は軽快に耕すんですが、途中でぐったり。「農家しんどいわー」が伝わってきます。
白狐は女性でしょうか。優しげな顔つきなんですよね。ここでは2人で畑仕事をした後、お互いの労をねぎらっているところです。肩もみもみ。
最後は収穫したものを観客に振る舞っていました。いきなり餅まき突入で驚きましたが、恒例のようで子どもたちはいち早く舞台前に陣取っていました。
わたしもかっぱえびせんゲット!やった!
【21〜22座】 護持弓神楽
護持弓神楽では櫛磐間戸命、豊磐間戸命が舞います。天石門別神とも言われますが、右大臣、左大臣の名前のほうが知られていると思います。神社の随神門にいるのはこの2人です。
いつもは弓矢を備えて門を警護しています。舞は邪気を払う意味を持っています。
右大臣・左大臣は知っていましたが、おじいちゃんの印象だったので。。若々しく、かっこよかったです!
番外:八岐大蛇退治
神楽には番外として八岐大蛇退治があるんです。古事記や日本書紀をご存じの方なら興味津々ですよね。美しい櫛稲田姫を狙う八岐大蛇を素戔嗚がやっつけるお話です。
よく知られているのは大蛇をお酒で酔わせた好きに素戔嗚が斬りつけるというもの。でも、こちらではちょっと違うストーリー。
まずは2人のひょっとこが登場。ごきげんな様子で農作業をしているとおじいさんに連れられた櫛稲田姫がやってきます。
ひょっとこたちはそれを眺めているだけですが、やがて大蛇が現れ姫に狙いを定めます。ひょっとこたちは姫を助けようとしますが。。敵うはずもありません。
大蛇は姫を飲み込もうと襲いかかりますが。。姫の掲げた宝剣によって大蛇は近づけません。なんどか繰り返していると剣の宝力が衰えだし姫のピンチ!
そこに颯爽と現れたのが素戔嗚。大剣を勇ましく構えて大蛇に立ち向かっていきます。古事記だと素戔嗚は一方的にやっつけてしまいますが、神楽だと緊迫のバトルが続きます。
最後はスサノオの勝利によって幕を閉じます。スサノオが神に祈る姿は物語の一部というより、一人の演者としてだったと思います。
このあとは少し時間をおいてまた別の演目がはじまりました。非常に充実した祭礼です。告知が周辺のみなのでほとんどの方がご存じないかと思いますが、無音劇として楽しめますので、ちょっとでも記紀を読んだことのある方にはぜひご覧いただきたいです!
付録:演舞一覧
金山彦命(金神)、岡象女命(水神)
アクセス
名称 | 内外大神宮 |
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住所 | 茨城県筑西市小栗一番地(筑西市小栗字宮本一番地) |
駐車場 | あり |
年間行事 | 1月1日…元旦祭(午前0時) 2月節分の日…節分祭 4月21日(もしくは直前の日曜日)…例祭 7月…祇園祭(古くは6月14日) 11月10日(もしくは直前の日曜日)…秋祭・新嘗祭・熊野神社祭 |
御朱印
内外大神宮の御朱印(印刷)です。令和4年(2022年)の秋祭から頒布がはじまりました。
社殿から向かって右側の社務所で授与しております。この御朱印を待望していた方は多いようですね。ありがたくいただきましょう。
まとめ
この記事のまとめ
- 小栗は伊勢神宮の領地だったのでご祭神が勧請された
- 太々神楽は岩戸神楽。神話に基づく物語が演じられる
- 御朱印は例祭でいただける(かもしれない)
参考文献
茨城県神社誌/茨城県神社庁
wataがいま読んでいる本
マンガで『古事記』を学びたい方向け
神社巡りの初心者におすすめ
記事は筆者の主観が多分に含まれております。
誤解や情報が古くなっている場合があることをご了承ください。