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- 徳満寺の由緒
- 地蔵まつりについて
- 御朱印のいただき方
利根町の歴史を辿るなら布川は欠かせません。その中心地にあるのが徳満寺です。
内容が本当に盛りだくさん。一度ではとても書ききれないので注目すべきポイントだけピックアップしたいと思います。
この記事では利根町の徳満寺と地蔵まつりをご紹介します。地蔵まつりは毎年11月下旬に開かれる秘仏御開帳の行事です♪
徳満寺とは
徳満寺は利根町の布川に位置する真言宗(豊山派)のお寺。町役場の近くの高台にあり、木々が生い茂る前は利根川が見渡せたことでしょう。
徳満寺の創建については不明です。確認できるもっとも古い歴史は赤松宗旦の記した利根川図誌にある元亀年間(1570〜1573年)に祐誠上人が中興したということ。
その頃はいまの門前にありましたが、布川城が廃城になった慶長年間(1600年頃)に現在の場所に移築されました。
元禄年間(1688〜1703)年になると京都の六波羅探題から勧請した地蔵菩薩を本尊とするようになり、本堂が建立されます。いまに続く地蔵まつり(地蔵市)がはじまったのはこの頃といわれます。
地蔵菩薩は毎年11月下旬から12月上旬にかけて御開帳(公開)。あわせて開かれる地蔵まつりによってかつては大変な賑わいだったそうです。
利根川図誌によると徳満寺は大岩田(土浦市)の法泉寺の末寺です。
寺宝の金銅板両界曼荼羅は利根町にひとつだけの国指定の重要文化財です。
駐車場
徳満寺は山門付近に駐車場がありません。でも、東側には広大な駐車スペースがあります。
昔は幼稚園とか保育園だったのでしょうか?まつりのときは駐車場までが混雑しているかもしれませんが、駐車できないことはないでしょう。
行事のときは近くの町役場に駐車するのもありかも!
地蔵まつり(地蔵市)
訪れた11月30日は恒例の地蔵まつり。今年(2019年)は11月30日から12月2日まで開かれました。
徳満寺の地蔵菩薩は延命地蔵とも呼ばれ、お参りすると長生きできるといわれています。
また子育て地蔵として子ども成長を願うお地蔵でもあります。子育て地蔵には医者がさじを投げるほどの難病にかかった子どもを救ったという伝説があるんです。
個人的には後ほどご紹介する”絵馬”と深い関係があると考えられるので、”子育て地蔵”には色々思うところがあります。
まつり期間中の日曜日には護摩焚きが催されます。願い事を護摩木を炊いた煙にのせて天に届けるんですね。真言宗や天台宗など密教系の宗派独自の行事です。
こちらでは家内安全・身体堅固・商売繁盛・厄除・交通安全・安産などを願います。
山門
参拝はいつも正面からがモットーのわたし。頑張って石段を登るところからスタート。そういえば、この日は隣の金比羅神社とつながっている通路が塞がれていました。
石段にはたくさんの石仏が並べられています。近隣から寄せられたものも多いかと思います。開発が進むと置き場に困ってしまうこともあるんですよね。
徳満寺の山門はシンプルながら奥に立派な本堂(客殿)が見える美しい構図。紅葉とあわさって素敵な空間です。扁額には海珠山とあります。海に山に珠ですか。山号まで美しい。
本堂(客殿)
戸が明るい色になっていますね。お正月にきたときには深い茶色でしたので新しくしたようです。
戦中は疎開民の受け入れをしていました。戦争が終わって帰るときにはみんなで大掃除をしたという思い出話を聞いたことがあります。
寛政8年(1796年)に17代日憧によって建立。じつに200年以上の歴史があるんですね〜
わたしが訪ねたときは三遊亭絵馬さんの紙切が催されていました。絵馬さんはポスターの落ち着いた雰囲気とは違っていてかなりのハイテンション。
髪は金髪。客席からドンドンお題をもらってチョキチョキしていました。「令和」「運」どうやって切れば。。と思うようなお題もありましたが、見事に完成させてました。すごい。
間引き絵馬
本堂に上がり正面よりやや左側の間引き絵馬が掲げてあります。間引き。。いわゆる口減らしで幼い子供を手にかける行為です。
いまでは当然犯罪ですが、明治時代に禁止されるまでは各地でありました。(わたしの住む土浦でもあったらしい。。)障子に写った女性の影には角が見えます。。
作者や書かれた時代はわかりません。また以前は地蔵堂に掲げられていました。右側の剥がれた部分の下に地蔵の足が見えるのは、つまりそういうことなのでしょう。
民俗学の父と呼ばれる柳田國男は13歳のときに布川でこの絵を見ました。のちに「その意味を、私は子供心に理解し、寒いような気持ちになった」と述べましたが、率直な感想だと思います。いわゆるトラウマ。
柳田が民俗に興味を持つきっかけになったといわれますが、農務官僚の職に就いたことにも影響しました。飢饉による貧困を無くしたかったのです。
地蔵堂
五色幕が鮮やかな地蔵堂。改修中のようでちょっと手狭。大勢の参拝者がいたのでぶつからないように歩くのに一苦労。。
正面にお線香があり、50円を納めて炊くことができました。地蔵堂右手では祈祷の受付をしており、行列ができていました。申し込んだ方だけ中に入ることができます。
ご本尊の地蔵菩薩は2m21cmと巨大。”茨城の寺”によると運慶の子・湛慶が彫刻したのだとか。経緯はわかりませんが、なんらかの理由で徳満寺に寄進(勧請)されました。
お参りのあとに地蔵おみくじもいただきました。やっぱり大吉。。おみくじだけは調子いいのです。
地蔵堂は銚子の観音堂をもらいうけて建て直したといわれています。
おびんずるさま
地蔵堂の正面右側にあるのがおびんずるさま(賓頭盧)。
釈迦の弟子でしたが、神通力を見せびらかしたために叱られたというお話があります。そのため釈迦が入滅したあとも人々を救い続けているのだとか。
おびんずるさまは宗派に関係なく置かれているようですね。自分の体の悪いところと同じ箇所をなでるとよくなるといわれています。なでなでしましょう。
おまけ:鐘楼堂
徳満寺の梵鐘です。周辺に朝を知らせる時の鐘としての役目を持っており、夏は5時、冬は6時に撞かれます。
それ以外に撞くと警報の意味になってしまうので、勝手に撞いてはいけません。
ただし。。除夜の鐘(大晦日)と初詣、そして地蔵まつりのときだけは例外。お参りにあわせて撞くことができます。
貴重な機会だったので音色を聞かせていただきました。前後にしっかり合唱。ありがたや〜
四郡大師と奥の院
以前、龍ケ崎市の別雷神社を参拝した際、境内に四郡大師の紙が貼られた仏堂を目にしました。中に弘法大師像が安置されていたので大師堂だとわかったのですが、四郡とは?
ぐぐっていたら利根町のタヌポンさんのサイトに行き着きました。(さすが利根町のことならなんでもご存知)それによると四郡大師の四郡とは河内郡、相馬郡、印旛郡、埴生郡のこと。
徳満寺を中心に四国八十八ヶ所の霊場に見立てた新四国八十八ヶ所を設け、毎年4月1日〜10日に巡る信仰があるんです。「お大師様」というそう。
庫裏の東側にある奥の院はその88番目の札所。つまり結願の地なのです。見た感じ新しそうな建物ですが、もともと昭和10年に弘法大師千百年御遠忌の記念事業として建立されました。高野山の奥の院を模しており、当時は森の中にひっそりとあったんです。
堂内の中央には木造の大師様、両脇には石像の大師様が安置されています。
以上の説明は近年立てられたと思われる立て札にありました。お寺で尋ねる方が多かったんでしょうね〜
御朱印
徳満寺の御朱印です。御朱印料は300円です。
本堂右手の庫裏からお声掛けしていただけます。
お祭りの日は忙しそうなので避けましたが、催事でなければ大丈夫だと思います。ご住職不在でも書き置きをいただけることがあります。
アクセス
年間行事元旦…初護摩修行
2月3日…節分回
4月1日〜4月10日…大師巡拝
7月第一日曜日…大刀祭
8月16日…施餓鬼会
8月中旬…川施餓鬼会
12月31日…除夜の鐘
名称 | 海珠山 多聞院 徳満寺 |
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住所 | 茨城県利根町布川3004 |
駐車場 | あり |
電話番号 | 0297-68-2442 |
まとめ
この記事のまとめ
- 徳満寺は16世紀後半に中興。それ以前の歴史は謎
- 地蔵まつりは11月下旬から12月上旬に開催。本尊の地蔵菩薩が開帳される
- 御朱印は本堂右手の庫裏でいただける。書き置きもあり
参考文献
茨城の寺(四)/今瀬文也
余談
”つくまい”の起源について
徳満寺に関してわたしが特に気になっているのは撞舞についてです。
撞舞は龍ケ崎市の八坂神社の例祭で約400年もの歴史があるとされています。しかし、記録として確認できるのは18世紀の後半辺りなんです。
利根町には尋舞といって撞舞に大変よく似た祭礼があるんです。祭礼は徳満寺ではなく同町内の布川大明神(現在の布川神社)で催されていました。
徳満寺は布川大明神の別当なので無関係なはずはありません。利根川図誌にある祭礼の様子には「別当」の文字がしっかりありますから、徳満寺の僧侶もいたのでしょう。
尋舞の起源は元禄年間といわれていますが、これは地蔵菩薩を本尊として地蔵市がはじまった時代と完全に一致。おそらく龍ケ崎市の八坂神社と同様に明確な根拠はないと思います。
だとすると気になるのはどちらが先にはじまったのか。いまのところ確かめる方法はありませんが、利根と龍ケ崎は関係している可能性が極めて高いと考えられます。
つくまいの原型が龍ケ崎に渡ったとすれば、おそらく河岸のあった布川を経由しています。龍ケ崎から千葉に渡る場合も布川を経由したことでしょう。
今度お寺の方と話す機会があったら訪ねてみようかな。。
記事は筆者の主観が多分に含まれております。
誤解や情報が古くなっている場合があることをご了承ください。
寺院巡りにどうぞ