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- 由緒とご祭神
- 祇園祭について
- 御朱印のいただき方
県内の神社は地域によってある程度の傾向が見られます。ご祭神で言えば県央のヤマトタケル、県北にタケミカヅチ、県西はフツヌシです。それじゃ県南はといえばスサノオ、つまり八坂神社が多く鎮座しています。
そんな県南の取手市にはやはり八坂神社があり、いまも市を代表する神社とされています。同神社の大きな特徴は社殿と例祭の2つ。この記事でじっくり紹介しますので取手に足を運んだ際にはぜひチェックしてみてください!
取手八坂神社とは
由緒
ご祭神は素盞鳴命です。由緒にあるとおり当初は牛頭天王をお祀りしていました。素盞嗚命としたのは神仏分離後の明治以降のことでしょう。
『茨城県神社誌』によれば創建にまつわる次のようなお話が社伝にあります。(旧仮名遣いは現行に訂正)
社伝によると神体の内一体は、利根川の大洪水に河岸の新録の大榎に白木の神輿が流れ着いて引っ掛かった。新六が拾い上げると中に金幣が光っている。早速名主に相談して利根川上流各所に公告したが、申出る者がなかったので当社に奉納したと云う。
少々分かりにくいのですが、流れ着いた神輿の中の金幣を神体として祀ったことが神社のはじまりということです。常識的には神様を流すな、と思うのですが、牛頭天王は蔓延した疫病をその身に宿すことで人々を守り、最終的に川に流すことで祓われると考えられていたようです。
ただ、毎回流すわけありませんし、こうした伝説は特別な事情があって実際にしたか、あるいは御霊会に影響されて伝承されたのではないかと思います。
当社同様に流れ着いた神体を牛頭天王として祀ったとする神社は多々あります。土浦の八坂神社や小美玉の素鵞神社などが有名ですね。神社によってはどこから流れてきたか具体的なこともあります。
また、一説には湯間田城主(坂東市岩井弓田)が敗戦により小文間に逃げ、元宿に十二軒の家を建てて町づくりをはじめたときに鎮祭したともいわれています。
当社で特に注目していただきたいのは社殿の彫刻。その次は毎年8月1〜3日に行われる祇園祭(例祭)です。関東三大神輿と呼ばれる重さ1トンの「荒みこし」が約80人の担ぎ手によって渡御されます。
日中のややまったりした雰囲気も好きですが、やっぱり夜がいいですね。担ぎ手も力を振り絞るようにして神輿に活力を与えています。こうして夏に蔓延しがちな疫病を祓ってきたのですね!
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当社旧取手市内の上町、仲町、片町の鎮守。
アクセス
駅の近くにあるのですが、車で行くのは意外に大変かも。最寄りのICは常磐道の谷和原IC。下りてから約15分ほど。
最寄り駅は常磐線の取手駅。駅から1kmほどなのでちょっと頑張れば徒歩で参拝可能。
駐車場の位置は若干わかりにくいです。大通りから社殿の背後を回ってたどり着けます。公式サイトで具体的な場所が示してありますので、初参拝の方はぜひご参照ください。
名称 | 八坂神社 |
---|---|
住所 | 茨城県取手市東1-2-9 |
駐車場 | あり |
TEL | 0297-72-1997 |
Webサイト | 公式サイト |
鳥居
大抵の方はこの鳥居を見るために駐車場からグルリと回るこむかと思います。境内は広大というわけではないので時間はかかりませんけどね。
明神式の鳥居は宝永4年(1707年)の建立。茨城県民的には徳川光圀(水戸黄門)が亡くなってから6年後と言うと時代感が掴めるでしょうか。
神社側の説明だと経済的な混乱期に建てられたことで鎮守に対する強い願いが表れているのではないかとあります。なるほど。各人の努力で乗り切れない問題は産土神に頼ったことでしょう。
狛犬
当社の狛犬は特筆すべきことだと思います。とはいえ分かっているのは明治15年(1882年)に「共融講」によって奉納されたということくらいですが。共融講ってどんな講でしょうね?
通常の狛犬と明らかに異なるのは台も含めた造型であること。岸壁に佇む親子がなんとも生々しい。このタイプの狛犬は県西地域によく見られ、雀神社や境香取神社なども同じタイプです。
躍動感があってわたしは好きですね。狛犬は境内に入り込もうとした不浄を監視する役目があるといわれますが、これはちょっと違うような。。でも面白い!
社殿
鳥居の先の参道は短めながらも趣たっぷり。お祭りの時期は左側に奉納された提灯がズラリと並びます。境内社もたくさんあって信仰が集中しています。これらは土地開発の結果なのでしょう。
取手の八坂神社といえば見事な社殿です。これはもう圧倒的で村社とは思えません。
こちらは龍、麒麟、鳳凰でしょうか。ひと目見ればわかる匠の技。本殿に力を入れている神社はいくつもありますが、拝殿までとなると稀ではないでしょうか。
せっかくなので公式サイトの解説を引用します。
拝殿は、天保3年(1832)壬辰6月吉日の建立で、拝殿の廻り廊下の角金具にはっきりと刻まれています。6月吉日と完成の日付があるのは当時の例大祭は6月であったため、大祭に間に合うように完成を急いだであろうことが想像できます。
現在の本殿(取手市指定有形文化財)は明治36年(1903)に再建されたもので一間社流造、建物全体に精巧な彫刻が施されています。この彫刻は明治39年(1906)に建てられ、後藤縫殿之助・保之助(後藤縫殿之助の二男)親子の作の刻明がありますが、縫殿之助は明治34年(1901)になくなっており、保之助は兄の後藤桂林を頼り、寺田松五郎、高石伊八郎らと共に完成させました。向拝の龍の彫刻の裏には「寺田松五郎」、本殿仮壁には「後藤桂林」の名が刻まれています。
この本殿は、明治期にできたとは思われぬほど古格の高い立派な建築物です。
後藤縫殿之助は国指定重要文化財の笠間稲荷の本殿の彫刻で知られています。子どもたちも凄まじい技術だったことがうかがえますね。
彫刻は東西南の三面に天岩戸、神功皇后の三韓征伐、日本武尊の東征のワンシーンが描かれています。いずれも超有名なのでご存知の方は多いはず。
ただし、本殿は覆屋によって保護されているため全容をカメラに納めるたりすることは叶いません。隙間から頑張って覗き見ることしか。。こればかりは仕方ない。
近年は彫刻の案内板が設置されています。境内でもどかしい思いだったのでこれは嬉しい。肉眼でよく分からない部分はぜひそちらで補ってください。
当社は元来西面でしたが、水戸街道の開通によって北面になったとのこと。北の街道から参拝する方々を迎えるためでしょう。そうした理由で向きを変えるのはとても珍しいと思います。
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御神木:大銀杏
社殿の向かって左手にあるのが御神木の大銀杏です。公式サイトの解説を引用します。
茨城県取手 八坂神社のご神木・大銀杏は、樹齢300年以上、黄金色の実をたわわに実らせることや乳柱(ちはしら)を煎じて飲むと乳が出るとの言い伝えから「子授け安産の木」「子育ての木」としてあがめられています。
樹齢はかなりのものですが、樹勢は衰えているようには見えません。例年ですと11月下旬に黄金に色づくそうです。わたしは夏に参拝することが多いのでまだ拝めておらず。。
少し神秘的なお話をすると紅葉した銀杏の黄色は五行説でいう「土気」の色です。土気は我々人間と同じ気ですからとても相性が良いのです。
大銀杏の乳柱を煎じて飲むことで体に良く作用するという言い伝えは、もしかしたら五行説に由来するのかもしれませんね。
境内社:水神社・水天宮
境内には数々の境内社が鎮座しております。その中で少し気になるのは参道の左手の水神社と水天宮。
ご祭神は以下の三柱です。
- 弥都波能売命
- 天御中主神
- 安徳天皇
①は水神社、②と③は水天宮のご祭神です。また立て札にはご利益について次のようにあります。
水と子供の守護
水難避け・農業・水運
安産・子授け・子育て
水の神といっても色々。弥都波能売命は神号からも水神であると想像できますが、安徳天皇は入水して崩御したことで神霊化したということなのでしょう。
ただ、天御中主神については水との関係が分かりにくい。わたしは同神が北極星を神格化した妙見菩薩と習合していたことから北方の神とされたと思っています。
北は五行説でいうところの「水気」の正位。水気は生命の気である木気を生む性質があるため農業や子授けのご利益に繋がります。
また、当地は利根川に近いことから水難によって亡くなった方を供養する意味もあったのではないかと思います。お盆の施餓鬼や墓石の水かけなど供養に水はつきものですからね。
神社では少し違うのですが、近年は釣り人向けの祈願もされている模様。すぐ近くを流れる利根川でバス釣りをする方が多いらしく、釣りの安全祈願もあるのだとか。社務所では専用の授与品もありますよ。
なんとも現代的ですが、個人的に牛頭天王は「水」と「土」にたいへん関係が深い神ですので、こうした祈願はじつは適切のように思います。楽しく安全に釣りができるといいですよね。
新四国相馬霊場 第三番札所:大師堂
社殿から向かって左手の出入り口付近に新四国相馬霊場の第三番札書に数えられる大師堂が建てられています。
境内の案内から引用します。
江戸時代、この地に西照寺というお寺があり、その境内の中に八坂神社がありました。後に西照寺が廃寺となり、八坂神社と大師堂が残りました。その御本尊である不動明王像は、この大師堂に遷されたとされています。
かつて八坂神社が西照寺内あったということは、鎮守社であり護法善神に位置付けられていたのでしょうか。西照寺が八坂神社の別当を務めていたとも考えられますね。
また、霊場については江戸時代にはじまり250年もの歴史があるのだとか。市役所のサイトに詳細がありますのでご覧ください。各霊場の位置については市の観光協会が印刷物を配布しているそうです。
御朱印
取手八坂神社の御朱印です。社殿の向かって右手の社務所でいただけます。
力強い書体ですね。手触りや紙の厚さからすると和紙でしょうか。2年前と違っていて少し驚き。
境内の弘法大師堂の御朱印も頒布しておりますので、霊場巡りをされている方はどうぞ。
まとめ
この記事のまとめ
- ご祭神は素盞嗚命。江戸時代に創建。
- 社殿は後藤縫殿之助の系統によって造られた
- 御朱印は霊場とあわせて2種類。社殿隣の社務所でいただける。
参考文献
茨城県神社誌/茨城県神社庁
茨城県の地名/編:平凡社
wataがいま読んでいる本
マンガで『古事記』を学びたい方向け
神社巡りの初心者におすすめ
記事は筆者の主観が多分に含まれております。
誤解や情報が古くなっている場合があることをご了承ください。
御朱印巡りをされる方へ