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つくばみらい市の寺社といえば、なんといっても板橋不動尊。板橋地区の不動院のことです。安産・子育てのご利益で知られ、「お犬不動」というちょっと変わった異名もあるのです。
お不動は酉年に生まれた方の守り本尊なのですが、当院の場合はきっと戌年の方も守護してくれることでしょう。同年に生まれた方はぜひお参りしてみてくださいね。特に女性にありがたいご本尊かと思います。
この記事では板橋不動尊の由緒や御朱印、それにお犬にちなんだ不思議な伝説をご紹介します。
この記事でわかること
- お寺の由緒とご利益
- 安産祈願につながるお犬の伝説
- 御朱印のいただき方
由緒
以下の由緒は主に境内で配布されているパンフレットを参考にしました。
弘法大師によって創建されたという。
*「大同3年」は『茨城の寺(三)』や『茨城の寺を訪ねて』などを参考。
*境内立て札、『茨城の寺を訪ねて』による
弘法大師1100年遠忌で本尊(旧国宝)を開帳。
*『図説伊奈のあゆみ』による
創建壱千百季記念
*『図説伊奈のあゆみ』による
*『図説伊奈のあゆみ』による
平成5年から同7年にかけて工事
平成20年から同23年にかけて工事
ご本尊は不動明王です。制多迦童子と矜羯羅童子を脇侍にした像は国指定重要文化財(旧国宝)。「板橋のお不動さん」として親しまれています。明王は比較的穏和な表情で藤原期の定朝様式といわれています。
定朝は平安時代に平等院の阿弥陀仏像を彫ったことで知られる究極の仏師のひとり。あらゆる仏師が目標とすべきとされる人物ですから、当院のお不動はそれだけ広く崇敬されたかと思います。
ちなみに不動明王の真言は次のとおり。境内には掲示されていなかったので、覚えていたらぜひお唱えください。きっとご利益マシマシです。
のうまくさんまんだ ばざらだん せんだ まかろしゃだそわたや うんたらた かんまん
火災にあったせいかあまり詳しい由緒は残っていないのですが、江戸時代に建てられた巨大な建造物を見れば権威があったことは間違いありません。加持祈祷の寺といいますから現世利益があるとされたのでしょう。
不動尊のご利益のおかげで多くの参拝者が訪れ、周辺が発展したといわれています。人々の生活を日々支えた点においてもありがたい存在だったと思います。
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大正4年(1915年) 不動明王及び二童子立像(国宝)
昭和25年(1950年)不動明王及び二童子立像(国指定)
昭和35年(1960年) 三重塔(県指定)
昭和40年(1965年) 大本堂(県指定)
昭和49年(1974年) 楼門(県指定)
平成25年(2013年) 仁王像
板橋不動尊は北関東三十六不動尊霊場の三十六番目。結願のお寺。
アクセス
名称 | 清安山 不動院 願成寺(真言宗豊山派) |
住所 | 茨城県つくばみらい市板橋2370-1 |
駐車場 | 無料(300台) |
Webサイト | 公式サイト つくばみらい市観光協会内 |
楼門
楼門(仁王門)茨城県指定有形文化財。見るからに立派なのでだれもが納得。建てられたのは元禄13年(1700年)これは水戸黄門が亡くなった前年ですね。
楼門は真っ赤、というよりも朱色。とても美しいと思いますが、なぜこの色なのかな?と疑問だったので調べてみました。
簡単に説明すると、むかしの人は朱色に魔除けの力を感じていたのだとか。朱色に使われる「丹」という原料には水銀が含まれているので、防虫・防腐効果があったのです。
困った虫を寄せ付けない、そして腐りにくい。それが、いつしか『魔除け』の意味に変わっていったと考えられます。科学的な理由を知らないと、色に不思議なチカラがあるように思いますよね!
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三重塔
楼門をくぐって右手側に見えるのが三重塔。こちらも茨城県指定有形文化財です。それにしても、大きい!
五重塔は聞いたことありますが、三重塔はあまり耳にしませんね。もともとはお釈迦様の遺骨を納める建物だったそうです。いまはどのように使われているのでしょうか。
建てられたのは安永4年(1775年)。重機を使わずにこれだけの塔を立てるのはどれだけ大変だったか。きっと江戸時代の職人の研ぎ澄まされた感覚と技術があったんですね。
大本堂
板橋不動尊の大本堂です。もちろん茨城県指定有形文化財です。大本堂は元文2年(1737年)に建てられました。
屋根が2つありますね。二重屋根といいます。暑さや雨水を避けることができる伝統の技術。とても広くて大きい建物なので、元旦や年中行事で賑やかな様子が想像できます。
正面にある屋根(向拝)の水引虹梁(横方向の柱)には立派な彫刻が見えます。一般的にここにあるのは龍か鳳凰なのですが、当院は一味違います。これが何か分かったらかなりの彫物通。
Xでコメントを求めたら「海女の玉取伝説」ではないかと教えていただきました。調べたところ志度町(香川県)に次のように伝わっていました。
子の出世へ命投じる
一人の海女の悲しい伝説が志度に伝えられている。
時は千三百余年前、天智天皇のころ。藤原鎌足が亡くなり、唐の第三代皇帝、高宗に嫁いでいた娘は父の追善のため、三つの宝物を贈った。しかし、都への船が志度浦にさしかかると、三つの宝物のうち「面向不背(めんこうふはい)の玉」が竜神に奪われてしまった。
鎌足の子の不比等は玉を取り戻すため、身分を隠して志度へ。海女と契り、一子房前をもうけた。不比等は数年後、素性を明かし、玉の奪還を海女に頼む。
海女は「わたしが玉を取り返してきましょう。その代わり、房前を藤原家の跡取りに約束してください」と竜宮に潜っていった。
腰に命綱をつけた海女の合図があり、不比等が綱をたぐると、海女の手足は竜が食いちぎっていた。が、十文字に切った乳房の下には、玉が隠されていた。
房前は藤原家を継ぎ、大臣に出世した。ある日、不比等から母の死の理由を聞かされ、志度を訪問。千基の石塔を志度寺に建て、菩提(ぼだい)を弔った。
海女の玉取り伝説(志度町)
子どものために命をかけた母親の物語なのですね。このお話は『日本書紀』の允恭天皇14年にある「阿波の大真珠」の影響が考えられるともいわれています。
お堂の前には弘法大師(空海聖人)と二匹のお犬様の像があります。弘法大師があるということは真言宗であることを意味します。犬の像はとっても珍しいですよね。安産の象徴で後述する伝説とも関係があります。
足を運ぶ度にかぶっている帽子が違っているような。。参拝者から頂いているのでしょうか。可愛らしくて似合っています♫
大本堂には本尊の不動明王と両童子があります。国指定重要文化財です。不動明王はとても怖い顔をしていますが、それは一生懸命に祈る人を悪いものから守るため。優しいだけでは人を守れないというのは、仏の世界でも同じなのですね。
本堂の内部に掲げられた画。不動さまの前でたくさんの女性が拝んでいます。昭和3年、女人講中、求子安産なども言葉も。。いまも昔も変わらない人々の想いが伝わってきます。
子安観音と子守こんがら童子
大本堂の右手前に子安観音と子守こんがら童子があります。
子どもを優しく抱いた観音さま。健やかな成長を願う両親の想いが現れているようですね。身体をなでながらお祈りすると良いそうです。
その後ろに並んでいるのが子守こんがら童子。こけしの姿をしています。解説を引用します。
子守こんがら童子のこと
当院の言い伝えによると、宍戸の藩主、松平公は世継ぎに恵まれず困ったいた所、当、板橋不動を信仰し熱心なお祈りにより男子が授かり立派に成長しそのお礼として現在の大本堂(県指定重要文化財)を寄進されました。
つくばみらい市 不動尊
このお人形さんはお不動さまのけんぞくの一人で「子守こんがら童子」と申します。
赤ちゃんの初参りにお子様の無事成長をご祈祷し、子どもが常に災難から守られ、丈夫に育ちますよう記念し授与しました。
子どもさんが成長して七才に成長のときに「願ほどき」に参詣し祈祷を受けられてここに納めます。
さりげなく大本堂が建てられた経緯が書かれていました。。ずらりと並んだ童子たちは不動尊のありがたい歴史なんですね。
御朱印
板橋不動尊の御朱印です。北関東三十六不動尊霊場の三十六番目。結願の地であることがわかります。
板橋不動尊のご祈祷などの各種受付は9:30から16:00までです。御朱印も同じ時間内であればいただけると思います。
板橋不動尊のもうひとつの名前が”お犬不動尊”。由来は以下のような民話で伝えられます。
江戸時代、いまのつくばみらい市の地には、難産のご婦人がたくさんいました。悲しくも親子共に亡くなってしまうことが何度もあったので、ご婦人は子どもを身ごもると不安な毎日を送るようになりました。
そんなある夜、村長の見る夢に、雄と雌の白い犬が現れて語りました。「わたしたちは板橋不動の使いです。板橋不動は女性たちが揃ってお参りをして護摩祈願をすれば、難産から救ってくれると言っています。」
それを覚えていた村長は、翌日村人たちと協議して一同揃って不動尊のもとに訪れました。お参りと護摩祈願をして、夢に見た白い犬を奉納したところ、それ以降、難産で苦しむものは一人もいなくなったといいます。
お使いが『お犬』というのが面白いですよね!
護摩祈願では物を焼きます。焼かれると煙となって天に舞い上がり、供物として捧げられます。一緒にお祈りをすることで願い事も天に届くというわけです。主に真言宗や天台宗のような密教系の宗派でされています。
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・板橋不動尊の創建は弘法大師と伝えられる
・お犬の伝説により安産・子育てのご利益があるといわれる
・御朱印は境内西の授与所でいただける
図説伊奈のあゆみ|編:伊奈町史編纂委員会
茨城の寺を訪ねて|編:茨城放送
記事は筆者の主観が多分に含まれております。
誤解や情報が古くなっている場合があることをご了承ください。
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